度重なる緊急事態宣言などで疲弊する兵庫の地域経済。中でも観光業は、コロナ禍前から日帰り客が多い上、訪日外国人客(インバウンド)の取り込みにも苦戦し、隣接する大阪、京都に後れを取ってきた。コロナ禍の出口はまだ見えないが、18日投開票の県知事選では、コロナ後を見据えた観光ビジョンが有権者の判断材料の一つとなる。
今春、神戸市内数カ所のホテルに見慣れないアニメ風キャラクターの等身大パネルが登場した。「KOBE艶男(アデメン)プロジェクト」と銘打った企画だ。タイムスリップに巻き込まれたコスプレ部員の男子大学生10人が、ホテルを拠点に神戸を観光する…。オリジナルのストーリーでアニメファンにPR。キャラと同じ衣装の男性モデルがホテルからライブ配信し、「会えるアニメキャラ」を目指すなど、実際に人が動く仕掛けも試みる。
地元のホテルなど12施設でつくる「神戸TOH(トー)の会」が企画した。代表の津田喜代子さん(59)は「宿泊客を増やそうと5年前から構想を練った。将来はアニメ好きな訪日客を増やしたい」と意気込む。
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前向きに動く津田さんたちだが、コロナ禍での宿泊業界のダメージは大きい。
日銀神戸支店によると、神戸市内主要10ホテルの客室稼働率(4月)は28・2%と低迷。3カ月に1回、企業に業況を聞き取る調査でも宿泊・飲食サービス業は極端に悪い。影響はホテル客を生み出す旅行業界にも及ぶが、飲食店のような協力金の支給はなく、公的融資で運転資金をつなぐ。
兵庫で新型コロナのまん延防止等重点措置は期限の11日までで解除されるが、業界の支援事業「Go To トラベル」の中止は続いたまま。中小の旅行業者でつくる兵庫県旅行業協同組合(姫路市)の門田(もんだ)基秀理事長(54)は「県が(感染状況がステージ2相当以下になった段階で)独自に実施する、県民向けの旅行・宿泊代金割引には期待している」と話す。
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「兵庫は今こそ訪日客に向き合うべきだ」。りそな総合研究所(大阪市)の荒木秀之主席研究員(46)=加東市出身=は指摘する。政府観光局によると、2019年の都道府県別外国人訪問率は、大阪2位、京都4位、奈良5位に対し、兵庫は11位にとどまる。
関西経済を20年近く分析する荒木さんは、大阪や京都への訪日客急増がホテルや飲食店向け投資を呼び込み、そこでの雇用増が兵庫の人口減につながった可能性を指摘する。兵庫以外の「関西」への人口流出が、近年増えているためだ。
県はコロナ禍の前、観光客の行動分析不足や交通アクセスの弱さなど、インバウンドの課題整理に着手。だが効果に結び付ける前にコロナ禍が降りかかった。
知事選では複数の候補が、25年大阪・関西万博を見据えた観光戦略などを主張。荒木さんは「コロナで訪日客誘致はリセットされた。今後の施策次第で挽回のチャンスはある」とする。(高見雄樹)
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