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強制不妊訴訟 国の賠償責任認めず、原告敗訴 旧優生保護法は違憲 知らぬまま手術される

2021/08/03 20:45

 旧優生保護法(1948~96年)の下、障害のため不妊手術を受けさせられた兵庫県内の障害者ら5人が起こした国家賠償請求訴訟の判決で、神戸地裁(小池明善裁判長)は3日、旧法を違憲としつつも、20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」を理由に全員の請求を棄却した。96年まで同法を改廃しなかった国会議員の不作為を違法とする初めての判断も示した。

 2018年以降、全国9地裁・支部で起こされた同種訴訟で6件目の判決。これまで5件全てで請求が退けられており、またしても原告敗訴となった。

 判決で小池裁判長は旧優生保護法の立法目的を「極めて非人道的」と指摘。「個人の尊重を基本原理とする日本国憲法の理念に反することは明らか」とし、憲法13、14、24条に違反するとした。神戸地裁を含む計6件の判決で、旧法を違憲と断じたのは4件目。

 しかし、手術が60年代だったことから「除斥期間」を適用し、原告らの賠償請求権の消滅を認定。原告側は手術時に不法行為と認定するのは困難で除斥期間の起算点は、仙台地裁で同種の裁判が起こされた18年1月としていたが、小池裁判長は遅くとも96年時点で「手術が不法行為に該当すると認識することができた」との見解を示した。

 裁判長は主文宣告後、判決理由の説明をしなかった。判決文で被害者の救済や差別是正について触れ、「現在も旧法の影響で根深く存在する偏見や差別を解消するため、積極的な施策を期待したい」と記した。

 原告は、明石市の小林宝二さん(89)、喜美子さん(88)夫妻、神戸市の鈴木由美さん(65)、兵庫県内の80代夫妻-の5人。判決によると、聴覚障害者の喜美子さんと80代男性、脳性まひの鈴木さんが不妊手術をされた。80代男性は昨年11月に亡くなっている。

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