• 印刷
コロナ禍で撮影場所を韓国・釜山から広島に変更した。「結果的にロケーションとしての素晴らしさが十分に画面に収められた」という浜口竜介監督=大阪市内
拡大
コロナ禍で撮影場所を韓国・釜山から広島に変更した。「結果的にロケーションとしての素晴らしさが十分に画面に収められた」という浜口竜介監督=大阪市内

 第74回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した浜口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」がシネ・リーブル神戸など公開中だ。村上春樹の短編小説を原作に、独自の視点も盛り込み、繊細なせりふで登場人物の造形に厚みを加えた。「自分だけの力では受賞はなし得なかった。スタッフ、俳優、全員の力が集まり、現れた結果」と振り返る。

 妻の浮気現場を目撃した演出家の家福(西島秀俊)。妻が突然亡くなり、その真意は分からないまま。家福は広島で開催の演劇祭に招待され、多国籍の俳優が多言語で話す舞台「ワーニャ伯父さん」を演出することに。愛車の赤いサーブで向かった家福に、専属ドライバーとしてみさき(三浦透子)が紹介される。彼女もある過去を抱えていた。

 車内で家福とみさきが交わす会話をはじめ、緻密に構成された登場人物間の言葉のやりとりが印象的だ。「言葉はあくまで演出のためのツールだが、役者が役を理解し、感情表現のための助けになる」と浜口監督。「言葉を発することで演じる肉体にも影響が出る。その反応が面白かったし、それが観客にも伝わってほしい」と期待する。

 カンヌでは計約80媒体の取材を受けた。関心の高さをうかがわせるが「世界中で読まれている『ハルキ』の人気によるところが大きい」と謙遜する。神戸・阪神間にゆかりが深い村上と同様、浜口監督も出世作「ハッピーアワー」を神戸に滞在して撮影した。「神戸に暮らしたことを切り離すことはできない。どこでもないところでは物語は生まれないから」

 映画作りとは「カメラを向けた世界から何かを『間借りする』こと」という。「だから作品として、しっかり現実の世界にお返しがしたいのです」

 映画を見た東京芸大時代の恩師、黒沢清監督(神戸市出身)からは「物語の宝石箱だ」とほめてもらったという。「月並みだけど、本当にうれしかった」と笑顔を見せた。(片岡達美)

神戸
もっと見る
 

天気(9月9日)

  • 33℃
  • 27℃
  • 30%

  • 34℃
  • 24℃
  • 40%

  • 35℃
  • 28℃
  • 20%

  • 35℃
  • 26℃
  • 20%

お知らせ