21日に発表された兵庫県内の基準地価で、9年ぶりの下落に転じた神戸の商業地。長引く新型コロナウイルス禍で緊急事態宣言が繰り返され、飲食店や宿泊業を中心に都心部が打撃を受けた状況が浮き彫りとなった。繁華街で空き店舗が目立つエリアもあり、地域経済への影響が懸念される。
三宮センター街のセンタープラザ。コロナ禍前はテナントが増加傾向だったビル内に空き店舗が目立つ。喫茶店店長の男性(48)は「緊急事態宣言が続き、徐々に空き店舗が増えていった。人通りは戻りつつあるが、まだコロナ禍前の半分ぐらい」と肩を落とす。
近年、三宮再整備の期待感もあり、周辺の地価上昇率は2桁で推移していた。コロナ禍での初の調査となった昨年は、直前までの上昇傾向が影響してプラスを維持。しかし、この1年で飲食、物販店の撤退が相次ぐなどして下落した。
県不動産鑑定士協会の尾崎潤副会長は「にぎわいが戻れば傾向が変わるかもしれない」と指摘しつつ、「今は(時短要請に応じた店への)協力金などで踏ん張っている面もあり、コロナの影響がより深刻な可能性もある。今後の動向を注視したい」と警戒する。
一方、阪神間の商業地は神戸と対照的だ。阪急逆瀬川や西宮北口、JR芦屋、伊丹などの駅前で上昇が目立った。神戸よりもインバウンド(訪日外国人客)減少の影響が小さいことに加え、商業地が住宅地に近いため、コロナ禍の外出自粛の影響も受けにくい。大阪への通勤・通学圏としてのマンション需要が安定していることも要因という。
住宅地へのコロナの影響は限定的で、都市部と人口減少が進む地方部との二極化が今後も続く見通し。リモートワークの普及などに伴う地方回帰の動きについて、県土地対策室は「コロナ禍で自治体への問い合わせは増えている。ただ、移住を上回る人口の自然減があり、地価に反映されるほどの影響は出ていない」とする。(石沢菜々子、斎藤 誉)
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