17日に告示され、5人が立候補して論戦が始まった神戸市長選。コロナ禍で財政が厳しさを増す中、大きな争点に浮上したのが都心・三宮の再整備だ。「これから神戸の街は大きく変わる」とさらなる投資への賛同を求める現職に対し、共産推薦の新人は「再整備の予算で市民の命や暮らしを守るべきだ」と真っ向から対立。訴えは二分し、選挙初日から火花を散らした。
三宮再整備は、三宮中心部からウオーターフロントまでの区域で、官民が約30年かけて取り組む巨大プロジェクト。4月に開業した「神戸三宮阪急ビル」をはじめ、高さ約160メートルのJR三ノ宮駅ビルや西日本最大級のバスターミナルを備える高層ツインタワー新設などの計画が続々と控える。
「市長選の争点は明確だ。姿を現しつつある神戸のまちづくりをさらに前に進めるのか、全部白紙に戻してゼロからやり直すのか」。3選を目指す現職の久元喜造氏(67)=自民、立民、公明、国民推薦=は神戸・元町で聴衆に問いかけた。
久元氏は、神戸三宮阪急ビルや歩行者空間として生まれ変わった「サンキタ通り」を挙げ、「阪神・淡路大震災でなかなか進められなかったまちづくりが動きだしている」と強調。「ポストコロナの時代がどういう姿になるのか頭に置き、進めていく」と訴えた。
これに対し、同じ元町で第一声を上げた兵庫労連事務局次長で新人の岡崎史典氏(52)=共産推薦=は、反対の立場を鮮明にした。
「コロナ前に計画された事業が、コロナ後の社会に通用するのか」と三宮再整備の「即中止」を主張。その予算を保健所の拡充や雇用の安定などに使うとし、「市民に冷たい政治を継続するのか、市民の命や暮らしを守る政治に転換していくのか」と力を込めた。
一方、それぞれに新人は市の活性化策や市政の転換を訴えた。須磨区で熱弁を振るった弁護士の鴇田香織氏(53)は、須磨海浜水族園のリニューアルを巡って、計画の見直しを求めた運動に触れ、「私は市の考えを一方的に押しつけるような市政運営はしない」と力説。市民や事業者との意見交換を重視するとした。
元加西市長の中川暢三氏(65)は三宮で第一声。神戸の人口減少を取り上げ、「大学や短大は数多いが、卒業、就職と同時に若い世代が出ていく。神戸で新しい産業を興し、成長企業を誘致して、若者が生活拠点を置けるようにすれば克服できる」と呼び掛けた。
空手道場代表の酒谷敏生氏(50)は、兵庫区の道場前で「市長になっても給料は受け取らず、全額寄付する。出産のお祝い金を渡して子どもの数を増やす」との主張を展開した。(神戸市長選取材班)
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