脳出血で倒れてから「左手のピアニスト」として再起した舘野泉さん(84)。演奏する曲に生命を吹き込むため、じっくりと時間をかけ、曲と向き合う。すると、その調べは、大きく息をして躍動し始める。11月のコンサートや神戸の街に、どんな思いを寄せるのだろう。(小林伸哉)
曲を弾き続けて、理想の響きを追求する。「僕は芸術家より『手職人』と呼ばれる方が好きです。こねくり回している感じ。音楽をかわいがっている、愛している、ということ」と語る。
今回の神戸公演では2004年の復帰コンサートで演奏したバッハ(ブラームス編)の「シャコンヌ」を披露する。シンプルな編曲で「精神が研ぎ澄まされていく。そういう感覚がないと弾けない」という。
復帰時までバッハをコンサートで弾いた経験がなく、当初は「生きた感じがでてこない」と苦労した。2カ月間、練習を続けたころに「『おやっ』という瞬間がでてきた。だんだん広がって、大きな音楽として、呼吸をしてきた」。
これまでステージで700回以上演奏してきたが「それでも毎回毎回、新しい音楽なんですよ。何回弾いても、毎日弾いても、飽きない」。音楽家の友人らからは「あんたの弾くバッハはいつも変わる」と評される。「一回一回を生きたものにしたい。神戸でもどんなものが出るか、自分でも分からない」といたずらっぽく笑う。
曲に向き合う姿勢を漁に例える。大魚を捕るように「網を流す」という。「音に生きた表情が出てくるには、すごく時間がかかる。あせってもだめ。網にかからない。やがて、向こうからぐっと入ってくる」。今回弾く光永浩一郎の「サムライ(舘野泉に捧ぐ)」も「2年ぐらいかかった。それから、だんだん大きくなってきている」という。
山田耕筰(梶谷修編)の「赤とんぼ」は「実は左手一本では技術的にすごく難しい曲。耳をそばだてて聞きたくなる。赤とんぼがいろんな姿を見せてくれて素晴らしい」と話す。
「港町神戸は、新しいものを受け入れる器の大きさ、自由さがある。大好きな街」と8年ぶりの神戸新聞松方ホールでの公演を喜び、楽しみにしているそう。「阪神・淡路大震災から長い時間、皆さん頑張って、立ち上がってきたもんね」。兵庫の被災者にも思いをはせ、全国各地の被災地で演奏を重ねる。その響きは災害だけでなく、さまざまな人生の苦難を抱える人々の心に寄り添ってきた。「音楽を聞いて、一回一回、新しい時を『生きている』ことをつかみとってくれたら…」。音楽が生きる力になることを願う。
鍵盤に触れるのは左手のみ。けれど、全身全霊で奏でている。「長く生きてきて、私全体が親しい人たちから受けとってきたものを、音楽の響きの中で伝えたい」
◇
コンサート「舘野泉~こころの音楽~」(神戸新聞社、神戸新聞文化財団主催)は11月3日、神戸市中央区の神戸新聞松方ホールで午後3時開演。入場料(全席指定)は前売り一般4300円ほか。松方ホールチケットオフィスTEL078・362・7191
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