新型コロナウイルスの第3波がじわりと拡大していた昨年秋。兵庫県香美町の沖合底引き網漁船「竜宝丸」(39トン)の船主、黒田淳さん(65)は途方に暮れていた。
毎年11月6日に設定されているズワイガニ漁の解禁日が迫っていた。だが、船員が足りない。
「6人いれば仕事は回せるが、けがや病気で休む人間が出たときが怖い。5人では無理が利かず、水揚げ量は確実に減る…」
船員不足の原因は、コロナの感染拡大だ。政府の入国制限が続き、インドネシア人技能実習生が来日できずにいた。
漁業は過酷な仕事だ。若い人は船員になりたがらず、高齢化が進む。技能実習生なしには成り立たないのが現実だ。それでも、黒田さんは、なんとか地元漁師1人を確保し、最低必要な6人を集めた。
余力はない。リスクを抱えての出漁。だが、しばらくすると、雰囲気が一変した。政府の観光支援事業「Go To トラベル」がカニのまちに空前の恩恵をもたらしたからだ。
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GoToは、宿泊料金の半分相当を国が負担する。普段なら利用できないような高級旅館に宿泊する客が急増し、瞬く間に予約が埋まった。
カニの需要も一気に膨らみ、単価は前年度の1・4倍に。黒田さんは11、12月だけで年収の半分を上回る約5千万円を稼いだ。
第3波の拡大で、GoTo事業は年末に全国で停止された。それでも全漁船44隻のシーズン漁獲金額は過去最高の52億円に達した。
黒田さんは笑みを浮かべて話す。「メリットしかなかった。定期的にやってくれると、他の魚の需要も増えてありがたい」
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感染第3波拡大の一因になったと批判されたGoTo事業。特需の一方で、混乱も引き起こした。
豊岡市の城崎温泉街の老舗旅館「小林屋」。第5波が収束し、政府がGoToの再開を検討する中、10代目の永本冬森代表取締役(47)は、あえて来春まで臨時休業し、旅館の改修をすると決めた。
なぜか。「売り上げは確かに例年並みに戻った。ただ、旅館経営ではやってはいけないカンフル剤だった」と振り返る。
繁忙やトラブル対応に追われて疲れ果て、納得のいくおもてなしができなくなった。「お客さんは大事。でも会社としては従業員のメンタルや生活も大事だ」
昨年7月の事業開始以降、必要な情報や書類はなかなか届かず、客から「何で分からないんだ」と問い合わせが相次いだ。だが、旅館側にも情報がなく、答えようがなかった。
新たな仕事も増えた。チェックアウト後は、大量の備品を除菌室に運び込む。普段より3、4時間も余計にかかり、十分に休憩が取れないまま次の客を迎えざるを得なかった。
プレッシャーから「接客が怖い」と不安を訴えたり、体調を崩したりする従業員も出たという。
期間中の宿泊客のうち、割引なしで再び足を運んでくれる人はどれだけいるだろう。「果たして未来につながる忙しさだったのか。長く愛される旅館でありたいからこそ、今は休業を決めた」と話す。
世界を見れば、前年の納税額などを基に個人に対して生活保障をする例もある。「なぜ、日本はGoToという方法を選択したのか」。永本さんは疑問を呈した上で、訴える。
「もし再開するなら、現場の実情を反映してほしい」
(金海隆至、阿部江利)
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