米大リーグのア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた大谷翔平。投打の“二刀流”を貫き、常識を覆す偉業を遂げた要因とは-。テレビのトーク番組で知られる臨床スポーツ心理学者で、追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問の児玉光雄さん(74)=神戸市東灘区=は、本人独自の思考法や習慣があると分析する。
児玉さんは、著書に「大谷翔平86のメッセージ」(2018年、三笠書房)がある。その中で、大谷を“真の楽観主義者”と表現。その心は「単にポジティブというのではなく、良いことも悪いことも人生で起きるものとして、事実をありのままに受け入れる。そこから何かを学び、常にベストを尽くすことができる」と説く。また、イチローさんら一流選手との共通点として「才能とともに、持論があってそれを貫いている」と指摘する。
投打の活躍を支えた豊富な練習量にも、「自分を高めるために、好きで自発的にやっているので、苦痛にならず、努力しているという意識もないのでは」と話す。
一般人も大谷から学ぶべきことがあるという。「突然偉大なことができたわけではなく、地道な日々の積み重ねがあったからこそ。表に現れなかっただけで、着実に成長していた。目の前の、1日単位の小さな目標をクリアしていくことが大事」と訴える。
さらに、ごみを拾うなどの善行により、運を引き寄せられるという考え方にも注目。「周囲の人の気持ちをくみ取って、広い視野で客観視できる。それをすることで結果的に良いことが起きている」と述べた。
ほかにも、その日に起きた出来事や、次にしようと思うことをタブレット端末に記す習慣があったという。「自分を振り返ることで、自分を成長させたい意欲が強くなるのでは」とみている。
今季の活躍は「一流のメジャーリーガー2人分の働きをしたので、満票でのMVP選出は当然。エンゼルスがもっと強ければ、15勝、50本塁打はできたのでは」と言う。影響力も大きく「子どもたちに、僕たちもできるかもしれないという勇気を与えてくれた。野球を始める子がどんどん増えることを期待している」と語った。(井川朋宏)