新型コロナ禍の影響で、兵庫・播磨独特の文化といえる「秋祭りカレンダー」が揺れている。祭りどころの家庭に欠かせないアイテムだが、2年連続で中止や縮小が相次ぎ、カレンダーの素材になる最新の写真が不足しているためだ。過去の写真や古い資料を駆使して何とか完成させた氏子がいる一方、作製を取りやめた地区もある。
秋祭りカレンダーは一般的に、自治会や関連業者、祭典委員会が中心となり、その年に撮った写真を来年のカレンダーにして地元や得意先に販売したり、配ったりする。
姫路市と高砂市にまたがる大塩天満宮の氏子地区は、屋台の宮入りなどの自粛に伴い、来年分の作製を取りやめた。「カレンダーだけ買ってもらうのは申し訳ない」。作製メンバーの一人、喜多勇介さん(36)は決断の理由をそう明かす。
例年なら約1200部を作り、地域の自治会などに販売する。「『今年はどうするのか』といった問い合わせもあり心苦しいが、仕方ない」と喜多さん。今後、通常の開催になれば再開する予定という。
一方、灘のけんか祭りで知られる松原八幡神社(姫路市白浜町)の氏子、木場地区で屋台などの制作を続ける大工福田喜次さん(69)は、今年も約千部を作って取引先などに配った。
来年のカレンダーに使ったのは、例大祭の様子が描かれた江戸時代の絵巻や、新調された直後の白木屋台の写真だ。選定に携わった大工大和良作さん(53)は「祭りの伝統を見直すきっかけになれば」とする。
コロナ禍で様変わりしたカレンダー事情。例年、播磨各地から注文を受けるという神戸市の印刷会社の担当者(57)も「注文は昨年に続き、例年の約8割減」と声を落とす。
今年、氏子らから同社に寄せられた相談には「載せられる写真がない」という声もあったという。熱心な世帯は同じカレンダーを2部購入し、一つは実用に、もう一つは保管用にすることもある。そのため「過去に使った写真の使い回しを嫌う傾向がある」と話す。
神戸や阪神間にはほぼなく、播磨独特の文化といえる秋祭りカレンダー。この担当者は「『来年は作るで』と言ってくれる氏子もおり、カレンダーは地域になくてはならない存在と感じる。来年こそ通常の祭りができるよう願いたい」と話した。(山本 晃)
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