上方落語協会副会長を務める重鎮が歌の世界に入門した。2018年に四代目として「春団治」を継ぎ、大名跡を後世に残す一助になればと、「恥を忍んで」シングルCD発売を決断した。作詞作曲は専門家に依頼したが、「死ぬまで芸に磨きを」と、自身の信念は歌詞に盛り込まれている。「新しいことに挑戦することで、特に70歳を超えた同世代の人への励ましになればうれしい」と願う。
大阪府寝屋川市出身。先代の落語にほれ込み、高校2年で入門した。憧れの人に稽古してもらい、住み込みで家族のように過ごす日々が、青春の1ページに刻まれた。率直な物言いと人懐っこい笑顔が魅力で、テレビで共演したミヤコ蝶々さん(故人)から「はるさん」と愛称で呼ばれ、かわいがられた。笑いと涙の人情噺を得意とする。
芸への思いと好きな酒や女性を描き、タイトル名でもある「大阪人情しぐれ」と、お好み焼き店をモチーフに大阪の人情に触れた「人生泣き笑い」の2曲を収録した。
大阪-では、落語家らしい「せりふ」部分でも聴かせる。
〈胸の真ん中に色気がなかったら ただの無駄話や〉と落語の神髄に触れる。さらに〈阿呆な落語こそ阿呆ではできん 枯れて艶がでる それがほんまの名人芸や〉と続く。
歌のレッスンでは「ダメだしもあったが、師匠に稽古をしてもらった初心を思い出し、楽しかった」と笑顔で振り返る。
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