新型コロナウイルスのオミクロン株の急拡大で、兵庫県内の病院の発熱外来に患者が殺到している。電話が鳴り続け、日付が変わるまでPCR検査を続ける病院もある。また、高齢者施設の危機感も強い。看護師や介護士が感染したり、濃厚接触者になったりすると介護サービスの低下につながりかねず、スタッフ確保に四苦八苦する。(霍見真一郎、佐藤健介)
■「PCRを10時間回し続けても…」
神戸市須磨区の高橋病院では、1月半ばから発熱外来の患者が急増。年明けまで1日数人程度だったのが、24日には70人を受け入れた。高橋玲比古院長は「PCRを10時間回し続けても40人が限界。コロナ以外の救急患者や入院患者の検査もある。70人検査した日は午前0時を過ぎても回していた」と話す。
屋外に設けた臨時の発熱外来に次々と患者が来る。業務は膨大。70人検査した日は38人が陽性となったが、電話で結果を伝えるだけでも1人5~10分は要する。年末から事務員を3人増やし、発熱外来に他部署から2人の応援を入れた。
■風邪症状と見分けつきにくく
患者の急増は、急病診療所の運営にも影響する。伊丹市の阪神北広域こども急病センターでは、休日や夜間に発熱するなどした子どもの親から問い合わせが相次ぐ。同センターは「11日以降、急に相談が増えた印象。ただコロナの診療・検査機関ではないため、県のコールセンターを紹介している」と困惑。風邪症状と見分けがつきにくく、医師が防護服を着て対応するケースもあるという。
感染力が強いオミクロン株は、院内感染対策がカギ。神戸市中央区のファミリアメディカル神戸クリニックは完全予約制の小児科で、四つの診察室で待つ患者を医師が巡る。問診票もネット入力してもらい、接触を極力減らしている。田中聡院長は「院内感染が出るとクリニックを一時的に閉めることになり、患者さんにも迷惑がかかる」といい、感染対策を徹底する。
■介護施設はスタッフ確保に苦慮
神戸市北区の特別養護老人ホーム「六甲の館」ではスタッフの確保に神経をとがらせる。
看護師1人が家族の陽性反応で濃厚接触者となり、1月中旬から10日間、自宅待機に。別の看護師がカバーでたん吸引などの処置に追われ、食事をサポートできないこともあった。「欠勤者が増えたら、個々に寄り添うケアができるのか」と困惑する。
昨年12月に事業継続計画(BCP)を作成。介護士や看護師ら計約40人に占める出勤者の割合に応じ、省くサービスも定めた。出勤者が7割以下なら、入浴介助がシャワーか体を拭くだけになり、医療行為も命に関わらなければ延期する。3割以下の場合は、厚めのおむつを使って交換回数も少なくするなど、介護内容を絞り込む。
特養「KOBE須磨きらくえん」(同市須磨区)は、同一法人内の他施設や自治体、看護関係団体への応援依頼などをBCPに明記した。重村由香施設長は「状況によっては、デイサービスなどの在宅事業を休止して人員を確保することもある」と危ぐする。
兵庫県は、施設内感染などで職員が足りなくなる事態に備え、施設間で職員派遣を行う支援制度を導入。必要な交通費や宿泊費などを全額負担するが、事前登録は県全体の十数%にとどまるという。
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