「地域活性部」。一見、市役所や町役場の部署名のようだが、東洋大付属姫路高校(兵庫県姫路市書写)の文化部の一つだ。3年前、入学直後の男子生徒3人と家庭科教員による同好会として発足。高校近くにある担い手のいない農地を耕し始めた。近隣農家が野生動物の被害に悩んでいると聞けば、駆除されたシカの肉を商品化した。地元の悩み事の解決に一役買い、特産品をつくる活動は大人顔負けで、昨年春に部に昇格。部員数も30人に増えた。初期メンバーを含め、今春に卒業を控えた3年生部員を取材した。(段 貴則)
「何かやってみない?」。2019年4月、教員の一言で放課後の教室に集まったのは、当時1年生だった古川雄也さん(18)と三輪大志朗さん(18)、丸山蒼生(あおい)さん(18)。「入学直後でお互いをあまり知らなかった」(古川さん)という3人が、特産品開発チーム「プロジェクト 東洋」として動きだした。
まず、学校そばの畑で野菜づくりを始めた。農家などから農機具を借り、伝統野菜「姫路若菜」の復活など、作物の商品化に挑んだ。草引きなど慣れない作業ばかり。何度も畑近くの溝に降りて水をくみ、畑にまいた。書写山で落ち葉を集めて肥料にし、無農薬栽培にこだわった。
「よう育っとんな」。畑で汗を流す部員に、住民も声を掛けるようになった。
住民と交流するうち「シカの被害に困っている」と聞いた。猟友会で話を聞き、シカ肉処理施設で駆除されたシカの解体も体験。命を無駄にしないよう、シカ肉の商品化を決めた。
商品開発にはメンバーの得意分野を生かした。
料理好きの三輪さんは「幅広い世代においしく食べてもらいたい」と、試行錯誤を重ねた。焼き肉のタレやショウガ、ハーブなどで味付けを変え、メンバーに食べてもらった。「ジビエの感じを残すため、シカ肉のクセを取り過ぎないようにしたのがポイント」。自信作の缶詰ができた。
パッケージデザインは丸山さんが担当。「目が行くように配色にこだわった」といい、地場産品をそろえる播産館(姫路市南駅前町)の売り場ではひときわ目立っている。「自分たちの興味をもとにした活動が、企業も巻き込み、大きな動きとして広がっていった」と振り返る。
活動の幅を広げていく中で、同級生たちも仲間に加わった。「自分の成長にもつながりそう」と参加した椋野亜斗夢(むくのあとむ)さん(18)は「活動を通じ仲間たちとの絆も深まった」。下川智也さん(18)は農作業にはまり「若い世代に農業の楽しさを伝えていきたいと思うようになった」と話す。
チームは昨年4月、正式に部に昇格した。古川さんたちは「地域の人を元気にしたい」と、部の名称を「地域活性部」にした。古川さんに誘われて1年生の秋から参加している3年生部員大久保由璃杏(ゆりあ)さん(17)は、祖父母の農作業を手伝った経験を生かし、初期メンバーとして活動。古着を難民に送るプロジェクトなども担当した。「今でも同級生から『畑部』と呼ばれるけど、活動が広がり、後輩の女子部員も増えてうれしい」と話す。
卒業を前に、地産地消や地方創生の優れた取り組みとして、近畿農政局長賞と近畿経済産業局長賞を受けた。先月、来校した農政局担当者も「普通科高校の部活で農業活性化に取り組むのは珍しい」とたたえた。
部をまとめてきた古川さんは「部のプロジェクトは、どれもやったことのないことばかり。活動を通じて住民と触れ合うことができ、いい経験になった」と話している。
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■夢前高・パティシエ部、相生産業高・ボート部 特色ある部活動、各地に
東洋大付属姫路高校の地域活性部に限らず、播磨地域の各高校でも特色ある部活動が行われている。
夢前高校(姫路市夢前町前之庄)のパティシエ部は現在、約10人の部員が所属している。他の高校では、家庭科部や料理部の名称が一般的というが、菓子作りに特化。部で受け継いでいるレシピをもとに、季節に合わせたスイーツなどを手掛ける。
相生産業高校(相生市千尋町)には、播磨地域唯一というボート部がある。木造手こぎ舟のレース「ペーロン競漕(きょうそう)」が行われる相生湾を練習場所として、1948年に創部。近年もインターハイ出場を重ねる古豪として知られる。









