「息子が新型コロナウイルスに感染して、16日にある兵庫県立高校の推薦入試を受けられず、救済措置もない」。オミクロン株による感染急拡大が続く中、神戸新聞の双方向報道「スクープラボ」に、中学3年の長男(15)を持つ母親(34)=神戸市灘区=から、悲痛な声が寄せられた。本人にとって、それ以外の学校では難しい事情があるという。
母親によると、長男は約2年前から市内の児童養護施設で暮らし、近くの中学校に通う。9日夜、施設の職員から「(長男が)コロナ陽性だったので、推薦入試を受けられないかもしれない」と伝えられた。
現在、施設で暮らす長男は中学卒業後の3月、灘区の自宅に転居する予定だ。志望する県立高校総合学科は、推薦入試は全県から受験できるが、3月の一般入試は学区内に住む生徒しか受験できない。
学区外の灘区に移ると、志望校の一般入試は受けられないが、施設退所は長男の希望であり、家族も待ちわびていた。だから、長男は推薦入試に照準を合わせて勉強を続けてきた。
「ショックで信じられなかった」という母親は、急いで長男が通う中学校に相談した。中学校は受験先の高校と、別室受験などを協議してくれたが、実現しなかった。
長男にとっては、その高校を目指す理由があった。地元の中学校に通っていた頃、いじめに悩み、不登校も経験した。だが、施設近くに転校して、気の合う友達や信頼できる先輩と出会えた。そんな人たちと同じ高校に行きたいと思った。
志望校は通学時間や交通費の負担が大きいが、母親は「一緒に通学練習もしてみて、学校や通う生徒の雰囲気も長男に合っている」と感じた。「地元の高校だと、いじめていた側の生徒と一緒になる不安もある」とも話した。
兵庫県教育委員会は10日、コロナ陽性の救済措置として、推薦入試のみで全生徒を募集する学科やコースは特別選抜を行うと発表。推薦だけで募集する学科は、特色的で代替先が少ないためという。だが、総合学科などは「他の高校でも学べる」として特別選抜は実施しない。
母親は「推薦でしか志望校を受けられないのに、救済措置がないのは納得できない。こうしたケースは他にもあると思うので、子どもの努力が報われるようにしてほしい」と話している。(綱嶋葉名)
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