ウクライナ出身のマズレンコ・アナスタシアさん=神戸市北区=が8日、ロシアに侵攻された母国の避難民に救援物資を届けるため、ボランティアとして空路、隣国ポーランドに向けて出発する。故郷にいる両親とは連絡がつかず、安否も分からない。「じっとしていられない。少しでもいい。今できることをしたい」。焦燥の中、心を決めた。(貝原加奈)
マズレンコさんはウクライナ東部の港湾都市マリウポリ出身で、昨年1月からダンス教室「スタジオ エキセントリック」(神戸市長田区)でヨガやストレッチの講師をしている。ただ、ロシアの侵攻が始まってからは勤務できる精神状態ではないという。
先月26日、会員制交流サイト(SNS)上でのロシア人男性の呼び掛けに応じ、京都市内での抗議デモに参加。プラカードを手に「戦争反対」の声を上げた。
両親のいるマリウポリは電気やガス、水道などのライフラインが遮断され、「電話もできない。どんな生活をしているのか知ることすらできない」と涙を浮かべる。街はロシア軍に包囲されているといい、避難させることもできない。
首都キエフの地下鉄で生活する姉も気がかりだ。姉は軍の召集を待つ夫を置いて、国外に避難する予定はなく、爆撃の続く市内にとどまっている。
シェルターでリンゴをかじって過ごす子どもの映像に衝撃を受けたマズレンコさん。避難者を支援する現地のウクライナ人ジャーナリストに義援金を送付し、自らも急きょポーランド行きの航空券をとった。赤ちゃん用の粉ミルクや紙おむつ、レトルト食品などを荷にまとめ、8日に向かう。他のボランティアと協力し、ポーランドからウクライナに入国できればドニエプル川近くの町まで運ぶ計画だ。
マズレンコさんは「個人で支援物資を送るのは限界がある。物資やボランティアを届ける飛行機を日本政府に飛ばしてほしい」と切願する。
マズレンコさんと同じ神戸のダンス教室でバレエ講師を務めるコズロヴァ・ユリヤさんもウクライナのオデッサ出身。今も母が暮らしている。「義理の妹と一緒に日本に連れて来たい」と話し、ポーランドかモルドバに出国させる方法を探る。高齢の母に負担をかけることは不安だが「手遅れになる前に助け出したい」と話している。
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