兵庫県の外郭団体「ひょうご農林機構」が進める主要事業の一つで、民有地で木を育て、成長後に売却して土地所有者と収益を分け合う「分収造林事業」について、少なくとも数十億円の債務超過に陥っている可能性のあることが分かった。県の農林水産行政をテーマにした包括外部監査の報告書が22日公表され、その中で指摘。存廃も含め、事業の在り方を早急に検討するよう求めた。
包括外部監査は、自治体の予算の使い方を専門家の視点から点検する制度。委託を受けた公認会計士らが毎年実施し、今回は県民生活に関わりの深い農林水産をテーマに選んだ。
分収造林事業は、森林保全や高度経済成長期の住宅用建材確保などを目的に、国の政策の一環として1960年ごろから進められた。事業を担う林業公社が各地で設立され、兵庫でも62年に取り組みがスタート。現在は但馬や西播地域を中心に、計約2万ヘクタールでスギやヒノキを育てている。
同機構を所管する県林務課によると、実際に伐採が可能になるのは植栽の50~80年後で、兵庫でも売却実績はまだ少ない。この間の事業資金は主に借金で調達しており、同事業の負債は2020年度末時点で736億円(当時は前身の兵庫みどり公社)に上る。
これに対し、過去に投じた植栽や管理などの経費を「価値」と捉える会計ルールに基づくと、帳簿上の森林資産は625億円、不動産などを含む資産合計は737億3千万円となり、負債との差額である約1億3千万円が機構の正味財産とされる。
ただ、国産材の価格は1980年代以降、安価な外国産材の輸入などで低迷が続く。監査を担った公認会計士が現時点での森林資産の価値を改めて検証した結果、販売価格の低下で売却しても赤字が見込まれたり、生育が十分でなかったりする「含み損」が少なくとも数十億円に上り、正味財産を大幅に上回る可能性のあることが分かった。
報告書では、事業について「将来の継続性に疑問を持たざるを得ない」と指摘。約10年後には借金の返済が困難になる事態も想定されるとし、外部有識者ら専門家組織で今後の方向性を検討し、結論を出す必要があるとした。
全国では同様の課題から、2010年代に公社を解散する動きも相次いだ。県林務課は「分収林には水資源を蓄えたり、土砂の流出を防いだりといった公益的機能がある」とした上で、「機構の在り方についてはゼロベースで見直したい」とする。(田中陽一)
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