北朝鮮による拉致被害者の家族会が25日、結成から25年を迎える。近年は被害者の帰還に大きな進展がなく、わが子らを待ちわびながら老いを重ねる家族たちは、悔しさや焦りを募らせている。「もう猶予がない」。神戸市出身の被害者、有本恵子さん=失踪当時(23)=の父明弘さん(93)らは、行き詰まる現状に危機感を抱き、改めて早期解決を訴える。
1997年2月、北朝鮮による横田めぐみさん=同(13)=の拉致疑惑が報道などで表面化。3月、めぐみさんの父、故滋さんらが家族会を結成した。
家族会は、街頭での署名集めや国会議員らへの陳情、全国各地での講演に奔走した。粘り強い活動が政府や世論を動かし、2002年には新潟県の蓮池薫さんら5人の帰国が実現した。だが、その後は誰も帰国していない。
結成25年を前に、家族会と支援団体「救う会」は東京都内で合同会議を開いた。明弘さんは会議後の会見で、いまだ会えない娘への思いを語り、怒りや悲しみをあらわにした。
神棚に恵子さんの食事を供えて無事を祈る毎日や、日米のトップが変わるたびに「今度こそ」と抱く淡い期待…。過去の活動も振り返り、「どないして助けたらええのか教えてほしい」「あまりにも日本の国は頼りない」と繰り返した。
めぐみさんの母、早紀江さん(86)も家族会結成前を振り返り「煙のようにこつぜんと消えた娘を捜し、泣きながら海岸を走り回ったり、片っ端から電話帳を調べたり。気が狂うような20年だった。訴え続けるしかない」と力を込めた。
拉致被害者家族の高齢化も進み、一昨年に有本恵子さんの母嘉代子さんが94歳で、横田滋さんが87歳で死去した。昨年12月には、家族会前代表で田口八重子さん=同(22)=の兄、飯塚繁雄さんが83歳で亡くなった。未帰還の政府認定被害者の親で生きているのは、明弘さんと早紀江さんの2人だ。
めぐみさんの弟で、家族会代表を務める拓也さんは「家族にとって節目はなく、今も毎日苦しみの中にいる。残された時間はない。政府は早く具体的な救出に動いてほしい」と求めた。(末永陽子)
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