■かすむ保護主義 進む厳罰化
1997年に神戸市須磨区で児童2人が殺害されるなど、計5人が殺傷された神戸連続児童殺傷事件。14歳で逮捕され、医療少年院に送致された「少年A」が収容中に語った内容を記したメモが残っている。
「被害者のために自分ができることは何でもしたいです。手紙を出したいと思っています。罪を背負い、償いたい。一生、自分のしたこと、被害者のことを忘れずに生き続ける」
2002年、少年院での収容期間などを検討する場での発言を父親が書きとめていた。
事件で殺害された山下彩花ちゃん=当時(10)=と土師淳君=当時(11)=の遺族に、少年院を出た元少年は、毎年謝罪の手紙を書いた。
「なぜ自分の子どもが命を奪われなくてはいけなかったのか、納得する理由が知りたい」。淳君の父、土師守さん(65)は謝罪の手紙と長年向き合ってきた。「こちらが納得する手紙がどんな文章なのか、僕らには分からない。だが彼には答える義務がある」。何か前向きな変化があるのではないかと読み続けた。
目を通した最後は、15年の手紙。土師さんは報道機関に寄せた手記で心情をこう書いた。「昨年までとは異なり、私たちが事件の真の原因を知りたいと望んでいたことに対して彼なりの考えをつづっていたと思います」。三十数枚に及んだ文面が、心を動かしたかに見えた。
しかし、この直後の15年6月、30代になった加害男性は「元少年A」の名で自らの半生と事件を振り返る手記「絶歌」を、遺族に断りなく出版する。土師さんはその後2年は手紙の受け取りを拒んだ。3年後から手紙は届かなくなった。
事件から今年で25年となる。「家族が亡くなった状況は見せ物じゃないんですよね」。土師さんは「絶歌」を読んでいない。出版により、「子どもは2度殺された」とも語った。
◆◆
刑罰と違い、更生や立ち直りは「償い」として理解されず、少年法は「甘い」という声がある。「絶歌」の出版から3カ月後、自民党政務調査会が少年法の適用年齢を「18歳未満」とするよう提言し、5度目の法改正論議につながった。
そして今月施行された改正法は、新たに18、19歳を刑事裁判の手続きに乗せる対象事件を拡大した。
これに対し、連続児童殺傷事件で少年Aの審判に立ち会った野口善國弁護士(75)は「少年事件は減り続けていて、刑罰化は必要ない」と反発する。
「(少年Aは)『死刑になりたい』と言って自分の命の価値が分かっておらず、他人の命を奪う重大さが理解できなかった」。野口さんは刑罰による償いは形式的になりかねないとし、「自分のやったことの意味が本当に分かって謝ることこそが償いだ」と訴える。
今回の法改正は、民法などの「18歳成人」と足並みをそろえず、18、19歳を「特定少年」と位置づけるにとどめた。その過程は、保護や更生を重視する少年法が、刑罰化の流れに押されつつも、どうにか枠組みを維持したとも映る。
(霍見真一郎)
【バックナンバー】
(2)匿名の森 「会ってもいい」遺族の思い暗転、手記「絶歌」出版で
(1)生存者 連続児童殺傷、厳罰化の契機に 「罰受け償うのが当然」
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