政府は２９日付で２０２２年春の叙勲受章者を発表した。今回最高位の桐花大綬章には伊吹文明（ぶんめい）元衆院議長（８４）を選んだ。俳優の桃井かおり（本名・宇都宮かおり）さん（７１）らには旭日小綬章を贈る。受章者は桐花大綬章１人、旭日章９１９人、瑞宝章３１１４人で計４０３４人（兵庫県在住は１２０人）。うち女性は４５３人で全体の１１・２％を占め、０３年の制度改正以降で最多。民間人は１８６２人で４６・２％だった。

　旭日大綬章は杉田和博元官房副長官（８１）や鴨下一郎元環境相（７３）ら１１人で、田中直紀元防衛相（８１）や田中真紀子元外相（７８）も受章。作曲家の池辺晋一郎さん（７８）や歌人の佐佐木幸綱さん（８３）、日本画家の田渕俊夫さん（８０）は旭日中綬章に選ばれた。瑞宝大綬章は横畠（よこばたけ）裕介前内閣法制局長官（７０）ら４人だった。

　分野別では、産業振興から藤吉建二元三井化学社長（７８）が旭日重光章を、堀切功章（のりあき）キッコーマン会長（７０）が旭日中綬章を受ける。

　学術研究からは、無機化学で業績を上げた巽和行名古屋大名誉教授（７３）が瑞宝重光章に決まった。芸術文化では能楽師の山本東次郎さん（８４）が旭日中綬章に、医療・福祉では太田照男元栃木県医師会会長（７６）らが旭日小綬章に選ばれた。

　別枠の外国人叙勲は５９カ国・地域の１１２人（うち女性２２人）。ジョン・ルース元駐日米大使（６７）に旭日大綬章を、関西ブラジル人コミュニティＣＢＫ理事長の松原マリナアキズキさん（６８）＝神戸市＝に旭日双光章を、アッバス・アラグチ元駐日イラン大使（５９）に旭日重光章を贈る。

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■テレビや映画、兵庫ゆかりの曲も　旭日中綬章　作曲家・池辺晋一郎さん（７８）　

　黒沢明監督の「影武者」など映画音楽やテレビ番組を含め、幅広く活躍。「芸術は伝達というプロセスを経て完結する。受け取った方が認めてくれたら、最終地点に手を触れたぐらいにはなったかな」とほほ笑む。

　東京芸大在学中から注目され、ＮＨＫの大河ドラマは「元禄繚乱（げんろくりょうらん）」など５作品を担当。「３０～４０代は週に２、３回は徹夜しないと間に合わなかった」と振り返る。音楽番組「Ｎ響アワー」の司会も長年務めた。

　兵庫では、姫路市制１００周年を記念した「交響詩ひめじ」の曲を手掛け、同市文化国際交流財団の芸術監督を務めるなど縁が深い。「姫路との関わりは３０年以上。素朴で素晴らしいところ」と目を細める。昨年１２月に同市で初演されたオペラ「千姫」も作曲した。

　神戸市役所センター合唱団でも「阪神大震災鎮魂組曲『１９９５年１月１７日』」など計１１曲を作った。

　「今までは依頼された仕事をこなしてきた。今後は自分の意志による曲も書きたい」（永見将人）

■日系ブラジル人の子に母語教育　旭日双光章　関西ブラジル人コミュニティ理事長・松原マリナアキズキさん（６８）　

　日系ブラジル人の子どもたちに母語のポルトガル語を教えて２０年余り。ＮＰＯ法人の理事長として「たくさんの子と一緒に学んできた。苦しいこともあったけれど、やっぱり日本に来て良かった」と振り返る。

　ブラジルで生まれ育ち、夫と１９８８年に日本へ。９９年、友人の手伝いで明石市内の語学教室で教え始めた。子どもたちは学校で日本語は習うが、ポルトガル語に触れる機会は少なく、母語を話す親とのコミュニケーションが課題だった。

　自らは日本語の学習に心血を注いだ。小学生用の教材を使い、独学で深夜まで勉強。ポルトガル語教室の拠点が神戸に移って生徒が１人になることもあったが、歯を食いしばった。２００７年には法人化した。

　現在は４歳から高校３年生までの２０人が通い、２５０人近くが巣立った。彼らにとって大事な居場所にもなっているという。「自分や子どものためにやってきた。誰かに評価されるなんて思ってもみなかった」と受章を喜ぶ。（安福直剛）