子どもが遊ぶ際に歌う「あそびうた」。子どもの感性を刺激するだけでなく、親子が一緒に楽しむことで家族の絆を深める取り組みとして改めて注目を集めている。その効用や、家庭で実践する際のこつについて、神戸市を拠点に、あそびうたライブなどを展開する保育士ユニット「かば☆うま」のメンバーに取材した。(大橋凜太郎)
5月下旬、神戸市北区の正英幼稚園。馬賣(うまうり)真人さん(36)と和田武蔵さん(36)が優しい歌声とにぎやかな楽器演奏を披露しながら、手のひらや足の裏をくすぐるようなしぐさをする。軽やかなリズムに合わせて体を揺らしていた園児と保護者がそれをまねした。次に「抱っこして」と声がかかると、会場全体に満面の笑みが広がった。
かば☆うまは、大学で知り合った2人が、卒業後の2012年に結成。手遊びの歌など動きが入ったオリジナル曲ばかり約300曲を携え、幼稚園や商業施設などでライブを開いている。コロナ禍にあっても引く手あまたで、公演が20回を超える月もあるという。今はユニットの活動に軸足を置き、パートで保育士を続ける。
■毎日のルーティンに
2人の元には、ライブに参加したママやパパから、さまざまな反応が寄せられているという。
「映画館で駄々をこねる子どもに効果てきめん」との声は、「もぐらにゃきをつけろ」という曲を指したものだ。膝の上に子どもを乗せて揺らし、時々脚を開き、勢いを殺して落とす動きがあるが、座席で繰り返すうちに、子どもが落ち着きを取り戻すのだという。
音楽に合わせて脇や腹をくすぐる曲「こちょこちょでんしゃ」を巡っては、「子どもが歯磨きを嫌がらなくなった」といううれしい知らせが届いた。毎日の親子のルーティンになったといい、歯磨きに自然と向き合うようになる効果があったそうだ。
オリジナル曲か定番曲かに関わらず、こつをつかめば、家庭でも同様の効用が期待できそうだ。
■一緒にスキップを
かば☆うまの2人が、家庭であそびうたを実践する際に大切と説くのが、①スキンシップ②リズム③コミュニケーション-の3点だ。
スキンシップの一環で抱き締めると、愛情ホルモン「オキシトシン」が分泌される効果があるという。リズムについては「歌が苦手でも体で感じる振動が心地良ければ大丈夫」と指摘。コミュニケーションを巡っては、歌の最中に表情を見たり、語り掛けたりするだけでなく、遊び終わった後に「面白かったね」と共感し、具体的にどんなところが面白かったかを聞くことで、言葉の発達にもつながるという。
加えて「大人こそスキップを」と話すのは和田さんだ。「子どもはスキップが大好き。様子を見守るのも良いが、親子並んで一緒にスキップしてみて」と呼び掛ける。
どれも簡単にできそうなことばかりだ。どんな曲や歌でもいい。子どもとの一体感を味わうためにも、親子タイムにあそびうたに挑戦してみてはいかが。
■男性の育児参加促進
「あそびうた」は、子どもが遊ぶ際に歌う歌を指すが、明確な定義はない。手まり歌や縄跳び歌から、お笑いのリズムネタまで幅広く、狭義では、音楽教育法「リトミック」を指す場合もある。
あそびうたを持ちネタに活動する保育士ユニット「かば☆うま」の2人は、親子のふれあいを重視する。ライブでは父親をステージに上げ、覚えて帰ってもらうよう心掛けている。
今年4月に改正育児・介護休業法が施行され、子どもが生まれる従業員に育休制度を説明し、取得の意向を確認することが、全ての企業に義務付けられた。少子高齢化の解消に向け、男性の育児参加を促すのが狙いだ。
かば☆うまの馬賣真人さん(36)は「あそびうたを通して育児に積極的な男性が増えるお手伝いをしたい」と話している。
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「かば☆うま」オリジナルのあそびうたは、ユーチューブのチャンネル「あそびうたユニット『かばうま』」で公開している。