「甘さがあったと言わざるを得ない」-。尼崎市の全市民約46万人分の個人情報を記録したUSBメモリーを委託先の関係社員が紛失した問題。市は委託時に情報管理のルールを設けていたが、初歩的なミスが次々と明らかになった。長年の委託関係でチェックが形骸化していたとの指摘もあり、稲村和美市長は「悪用など最悪の事態を想定して対処したい」と会見で危機感をにじませた。
「市民にご心配をおかけし、心からおわびする」。稲村市長は会見の冒頭、頭を下げて謝罪した。
委託先の「BIPROGY(ビプロジー)関西支社」(ビ社)は市のコンピューター運営管理を長年担い、新型コロナウイルス禍での給付金支給業務も継続して受託していた。紛失した関係社員も20年近く市の業務に携わっていた。
契約に際し、市は個人情報の取り扱いのルールを設定。だがビ社は関係社員に具体的な説明や指示をしておらず、1人でUSBに情報を移し、許可を得ずに個人で持ち出していた。さらにデータの移管作業を終えた後もUSBから消去するのを怠り、かばんに入れたまま飲酒した上、紛失に気づいた後も速やかに市へ連絡をしていなかった。
ビ社幹部は「情報システムを預かる企業として絶対に守らなければいけなかった」と頭を下げた。
一方で、稲村市長も「これまでと同様、問題なくやってもらえると思っていた」とチェック不足を認め、市は今後、USBを使わざるを得ない場合の条件や許可、点検作業などを検証すると説明。契約事務全般にも適用し、職員研修を充実させるなどして再発防止を図るとした。
市が設置した専用ダイヤルには電話が殺到し、つながりにくい状態が続いているが、実際に流出が疑われる相談はないという。
(広畑千春)