今期での退任を決めた兵庫県尼崎市の稲村和美市長は7日午前に記者会見し、退任を正式表明した。会見の主な内容は以下の通り。
【冒頭発言】
一部新聞報道にありましたように、11月の尼崎市長選には立候補しない。私の市長としての任は3期12年を区切りにしたいと考えている。
もともとその予定でいたところ、USBメモリー紛失事案への対応を優先するということで(表明を)延期してきた。結果的に報道先行という形になったことについては、大変遺憾に思っている。
【質疑応答】
-次期市長選に立候補しないと決めた理由は。
「3期目に入る時点で、3期が一つの区切りだと思っていた。まちづくりの総合計画、それとセットで進めた行財政改革計画が今年度いっぱいで10年の計画期間を終える。6月議会で、次の10年の羅針盤となる総合計画について市議会で議決された。来年度からは新たなステージに入るということで、ここが一つのタイミングだと考えた」
-これまでの実績や達成した事業は。
「最も大きな使命は財政再建で、一定の道筋を付けることができた。尼崎市は長期間にわたって行財政改革に取り組んできた。前市長のとき財政は崖っぷちの状況にあり、厳しい改革に取り組まれた。それを引き継いだ私は改革の第2ステージ。財政の悪循環を生んでいる構造を断ち切る必要があった。市債残高の減少をしっかり見据え、予算を収支均衡させながら、必要な投資も両立させることができた」
「財政再建とバランスを取りながら、中学校給食のスタートや子ども医療費助成の拡充にも取り組んだ。任期中には市制100周年を迎えた。尼崎城をご寄付いただいたり、子育て支援センターの拠点整備を進めたりした。尼崎が新しいステージに向かっていくタイミング。イメージ向上にも努め、その手応えが出てきたところで今回、USBメモリーの紛失事案が起き、市政への信頼を損ねることになったのは、じくじたる思い」
-退任を決意したのはいつか。
「昨年末には近い人に意思を伝え始めていた。ありがたいことに、年齢が比較的若いこともあって『もう1期頑張るべきじゃないか』という声もいただいた。ただ市長の仕事は『これで十分』という終わりがない。そういう意味では、しっかりとバトンを渡すことまでが責任だと思い、調整を進めてきた。私の中では迷いはない」
-後継候補として名前が挙がっている前市教育長(松本真氏)について。いつ打診したか。
「令和2年度末で尼崎を離れる(文部科学省に戻る)タイミングがあったので、そのときに打診したのが最初」
-本人はどういう考えか。
「すでに退職の準備をされており、今月中にも(立候補表明の)会見を開かれると思う」
-退任の判断に、USBメモリーの紛失事案は影響していないということか。
「おっしゃる通り」
-紛失事案では、第三者委員会の議論に半年程度かかる。任期中に市長としてどこまで進めるか。
「理想は自分の任期中に一定の取り組みを終えることだと考えている」
-退任後の活動は。例えば国政進出などは考えているか。
「現時点ではノープラン。(国政は)一切考えていない」
「あと半年任期があるので、最後の1日までしっかり取り組んでいく。ありがとうございました」