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北村竹伸公民館長による調査報告を聞く住民たち=姫路市飾磨区妻鹿
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北村竹伸公民館長による調査報告を聞く住民たち=姫路市飾磨区妻鹿
妻鹿の歴史を調べた北村竹伸館長
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妻鹿の歴史を調べた北村竹伸館長
室町期に記されたとされる松原八幡神社の古文書にも「目賀」の記述がある(北村竹伸館長提供)
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室町期に記されたとされる松原八幡神社の古文書にも「目賀」の記述がある(北村竹伸館長提供)
岡山県和気町に残る目賀家譜(北村竹伸館長提供)
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岡山県和気町に残る目賀家譜(北村竹伸館長提供)
妻鹿町史料館を見学する目賀紀子さん(右)ら=姫路市飾磨区妻鹿
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妻鹿町史料館を見学する目賀紀子さん(右)ら=姫路市飾磨区妻鹿

 播磨の秋の象徴「灘のけんか祭り」に参加する旧灘七カ村の一つが、兵庫県姫路市飾磨区妻鹿だ。長い歴史を刻んできた地名「妻鹿」の由来として、ある言い伝えを思い浮かべる住民も多いはず。ところが、かつては「目賀」だったという。地元公民館長らが、その背景を調べてみると、羽柴秀吉と岡山県和気町に行き着いた。秀吉の播磨攻めから450年の時を超え、妻鹿と和気を結ぶ縁が明らかになり、新たな交流も生まれている。(安藤真子)

 「つがいの鹿が逃げた先が妻鹿と男鹿になった」。「妻鹿」の由来として、こんな言い伝えが広く知られてきた。実際、妻鹿の沖、播磨灘には男鹿島もある。ところが今月3日、妻鹿公民館で開かれた調査報告会は「地元の通説」に一石を投じる内容だった。

 調査をした北村竹伸館長は冒頭、住民約60人を前に「江戸時代に書かれた史料には『信ずべからず』と書いてある」と指摘。本当に古代から「妻鹿」だったのかという疑問をもとに、村名の変遷について調査内容の解説を始めた。

 まずは鎌倉時代。1289年作成という松原八幡神社(同市白浜町甲)の古文書は、地名を「目賀」と記し、神事や雑役に従事する多くの「神人(じんにん)」がいたとある。室町後期の1534年、地元・教念寺(きょうねんじ)で書かれたとされる資財帳も同様に「目賀」となっていた。

 一方、江戸初期の1663年、同寺が記録した史料には現代と同じ「妻鹿」表記が登場する。伊能忠敬が作成した日本地図でも「妻鹿村」とあり、室町期と江戸期の間に表記が変わったことが確認できた。

 「この間に何か歴史的な出来事があったのではないか」。こう仮説を立てた北村館長が思い当たったのが、約450年前の羽柴秀吉による播磨攻め。史料を調べると、松原八幡神社の「八幡神社史」などに手掛かりがあった。播磨攻めにより秀吉が同神社の対応に立腹したこと、社領を減らして神人を追放した-という記録があったという。

 北村館長らは、追放された神人のその後をたどり始めた。電話帳で「目賀」姓を調べ、妻鹿から約50キロ西の岡山県和気町大田原に「目賀」姓の世帯が多いことを突きとめた。同町の由加神社に調査を依頼すると、「先祖が兵庫県の『めが』という地から移ってきた」と代々伝え聞いてきたという目賀紀子さん(76)から手紙が届いた。

 北村館長ら4人が昨年11月、和気へ出向き、住民らに聞き取りをした。紀子さんによると、現在、大田原地区には目賀姓の世帯が十数軒あり、その多くは紀子さんと同様に「姫路のめが出身」と伝わっている。近年、建立された石碑「目賀家譜」には「英賀城落城のため、この地大田原に土着す」と刻まれていた。秀吉の播磨攻めと符合する内容だった。

 北村館長は調査報告会で「播磨攻めで立腹した秀吉は、松原八幡神社の社領を減らし、神人を追放した。史実を残さないために『妻鹿』と変えたのでは」との見立てを語った。その上で「先祖がこの村から移り住み、今なお目賀姓を名乗っている人たちがいることは時代を超えたロマンだ」と締めくくった。

■「目賀さん」妻鹿の町を探索 姓のルーツに思いはせ

 播磨攻めから約450年の時を経て、「目賀さん」が妻鹿に帰ってきた。調査報告会に合わせて、北村竹伸館長らが目賀紀子さんと息子の知義さん(52)=広島市=を招待した。

 報告を聞いた後、紀子さんらの先祖が見たであろう妻鹿の町を一緒に探索した。まず北村館長は、灘のけんか祭りに使われた屋台へ案内した。「うちのは、どこよりも立派なんや」との妻鹿自慢に、紀子さんもどこか誇らしげな表情で聞き入っていた。

 さらに、御旅山から飾磨区や播磨灘を一望し、教念寺も訪問した。自らのルーツに思いをはせた紀子さんは「目賀という姓は珍しく、幼い時は嫌いだった。報告会で聞いたような歴史を知っていたら、もっと誇りに思えたと思う」と話し、「いつか灘のけんか祭りを見てみたい」と笑顔だった。

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