全国の熱中症による死者が2012~21年の10年間で9642人に上ったことが、厚生労働省への取材で分かった。このうち兵庫県内は少なくとも540人を占めた。近畿などで統計史上最速の梅雨明けとなった今年は、6月の死者数が過去最多を記録。専門家は「災害級」の猛暑で犠牲者が膨らんだ18年の再来になる恐れがあるとして、警戒を呼びかけている。
医療機関の死亡診断書などを基にまとめる厚労省の人口動態統計から、神戸新聞社が熱中症の死者数を集計した。21年の750人は確定前の概数で、同年の兵庫県の死者数は明らかにされておらず、県内は20年まで9年間の合計とした。
全国の死者数が千人を超えた年は、10年間のうち4回を数えた。13年=1077人(うち県内67人)▽18年=1581人(同98人)▽19年=1224人(同59人)▽20年=1528人(同85人)-となり、18年が最多だった。
気象庁によると、全国の観測地点約900カ所のうち100カ所以上で最高気温35度以上の猛暑日となった日数は、13年=19日▽18年=28日▽19年=14日▽20年=21日-だった。半面、死者が500人台だった14年、600人台だった17年はそれぞれ3日にとどまり、猛暑日と死者数におおむね相関関係がみられた。
年代別の死者数が示されている20年までの9年間では、65歳以上が77・3~86・1%を占め、高齢者が目立った。
10年間で死者が最多だった18年は今年と同様、6月下旬に異例の早さで関東甲信地方が梅雨明け。気象庁は猛暑が続いた7月下旬に「命の危険がある温度。災害という認識はある」と会見を開いた。当時は高気圧の重なりなど複数の要因で高温が続いたとみられる。
日本救急医学会(東京)も18年、高齢者や持病のある人、子どもは熱中症にかかりやすい「熱中症弱者」として注意を呼びかけた経緯がある。
一方、近畿を含めて6月下旬に統計史上最速の梅雨明けが発表された今年は、世界的に異常気象をもたらす「ラニーニャ現象」の影響が指摘される。今後、猛暑が続く可能性が高いといい、同学会は6月末の緊急会見で、18年のような「災害級の再来」が危惧されると見解を示した。
総務省消防庁は、今年6月に熱中症で救急搬送された人が全国で1万5657人に上ったとの速報値を発表した。6月の1カ月としては過去最多だった。搬送後に死亡が確認された事例も17人と、6月の最多を更新した。(上田勇紀)