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在日ミャンマー人ら、国軍拘束のドキュメンタリー作家男性の解放訴え 森友問題の赤木さん妻も共感

2022/08/04 18:25

 軍が実権を握るミャンマーで拘束されたドキュメンタリー作家、久保田徹さん(26)を巡り、在日ミャンマー人や友人らが一日も早い解放を求めている。森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんで自殺した近畿財務局の元職員赤木俊夫さん=当時(54)=の妻雅子さん(51)=神戸市在住=もその一人。雅子さんらは「ミャンマーの窮状を世界に伝えるために命懸けで行った。友を早く帰して」と訴える。

 久保田さんは慶応大学在学中からロヒンギャ難民を中心に取材しドキュメンタリー作品を発表。7月中旬にミャンマー最大の都市ヤンゴンに入り、撮影を始めた。軍への抗議デモを近くで撮っていた30日、現地警察に拘束されたとされる。

 森友問題にも強い関心を示し、雅子さんとは取材を通じて知り合った。雅子さんは「声を出せない人の代わりに声を出し、間違っているときははっきり言う人」。亡き夫と重なる部分も多く、「正義感が強く、尊敬できる」と語る。

 久保田さんをよく知る在日ミャンマー人たちは、外務省前で解放を求める抗議デモや署名活動を展開。8月3日時点で約4万1000人の署名が集まった。

 また、フリージャーナリストの北角裕樹さんら友人6人が同日、日本記者クラブ(東京都千代田区)で会見を開いた。過去に日本人フリージャーナリストが紛争地で身柄を拘束される度に「自己責任論」が噴出したが、6人は「リスクを負って現地に行くのは本人にとっても苦しい。(ミャンマーの)自由の問題は常に明日の自分たちの問題でもある」と強調。久保田さんの人柄や仕事ぶり、渡航前のやり取りを明かした。

 北角さん自身も昨年、ミャンマーで抗議デモを取材していて拘束された。「ウクライナで戦争があり、国際的な関心がミャンマーから遠のいている」と指摘。「国軍の弾圧がひどくなる今、実態が伝えられていないのはおかしいとの思いが強かったのでは」と話す。

 ロヒンギャ出身で在日ミャンマー人のミョーチョーチョーさんは「日本の力はミャンマーにとってすごく大きい。何の罪もない若者たちを早く解放してほしい」と力を込めた。

 シェアハウスで同居していた今野誠二郎さん(25)は「苦しんでいる人に一度出会ったら目をそむけられない人。日々生活していたら忘れてしまうようなことも、自分事にして痛みを抱えていた」と振り返る。「彼がリスクを負ってでも行ったのは、弱い立場の人の痛みや悲しみを、世界から一つでも取り除きたいという祈りのような信念からだ」と涙ながらに語った。(末永陽子)

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