新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した兵庫県内の高齢者施設に、支援に入った医療従事者が取材に応じ、現場の窮状を訴えた。入所者だけでなくスタッフの感染も相次ぎ、ぎりぎりの対応を強いられているという。流行「第7波」では8月に入り、高齢者への感染拡大も目立ち始めており、「早い段階での対応を」と求めている。(高田康夫)
「何より初動が肝心。もっと早く支援に入れていれば、状況は違った」
全国でクラスターが起きた高齢者施設などを支援しているNPO法人「ジャパンハート」(東京都)の看護師、宮田理香さんは悔しさをにじませた。
宮田さんらの医療チームは7月25日、クラスターが発生した兵庫県内の高齢者施設に支援に入った。施設内で最初の感染者が出てから半月がたっており、その時点で入所者の7割が陽性だった。
感染者のうち、症状が重い1割程度は入院できたが、残りの入所者は中等症でも転院できず、施設内で酸素吸入や点滴などを施した。家族の意向でワクチンを接種していない人が比較的症状が重かったという。
また、スタッフも8割が陽性。通常なら十数人分の仕事を、残ったスタッフ2人だけで担わざるを得なかった。おむつ交換の回数を減らすなどして対応したが、水分補給や食事の用意でさえ手が回らず、施設内で亡くなる人もいた。
宮田さんは「入院はしやすくなり、マスクなどの物資も足りていたが、人が足りない状況は以前の波と全く変わらない」と話す。
「BA・5は感染力が強く、広がるペースが速い印象がある。高齢者施設に持ち込まないようにしても、ゼロにはできない。ぼやの段階で消せるように、すみやかに感染指導に入ることが大事。そうしないと死亡を防ぐことは難しい。兵庫県では指導に入るのが追いついていないのではないか」
宮田さんらは7月30日にこの施設の支援を終えたが、4日からは別の高齢者施設に支援に入っている。
■70代感染者急増 死亡率2・8%
第7波では感染者が急増しているが、中でも70代以上の感染者の伸びが目立つ。
70代以上の感染者は、6月28日~7月4日の1週間では405人で、全感染者の6・4%。それが約1カ月後の7月26日~8月1日には5860人となり、感染者中の割合も8・7%に。年代別に見ると、伸び率は最も高かった。
第6波では死亡者845人のうち、70代以上が776人を数えた。感染者全体では、死亡率は0・23%と低かったが、70代以上に限ると2・81%だった。
6月18日以降の第7波に限っても、70代以上の感染者は既に約1万4千人(8月1日時点)。高齢者施設や障害者施設でのクラスター発生も相次いでおり、県は高齢者ら重症化リスクが高い感染者への医療を充実させるため、「自主療養制度」の導入を決めている。
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