新型コロナウイルス感染者の「全数把握」を巡り、兵庫県は30日、医療機関が保健所に出す「発生届」の対象を高齢者ら重症化リスクの高い人に限定する措置は当面取らず、代わりにリスクの低い感染者は、発生届の記入項目を大幅に絞る方針を明らかにした。感染者の名前や携帯電話番号など、現行の3分の1程度の7項目の情報に絞り、医療機関や保健所の負担を緩和する。高齢者のほか、入院を要する人や妊婦らは従来通りとする。9月5日から新たな運用を始める予定。
30日の対策本部会議で決めた。全数把握を巡っては政府が24日、都道府県の判断で届け出対象を高齢者らに限定できるとの方針を発表した。兵庫県の斎藤元彦知事も当初は国の見直しを一定評価したが、30日の会議後の会見では見直しに伴う課題を挙げ、当面は県独自の負担緩和策を実施する意向を示した。
斎藤知事は、届け出の対象から外れる患者について「容体悪化で入院が必要となった場合などの本人確認の方法が明確でなく、仮に医療機関に問い合わせれば新たな負担が生じる」と指摘。保険給付に必要な「療養証明」の発行も想定されておらず、個人負担で診断書の取得が必要になるケースが生じかねないとした。
「国に(こうした課題への対応を)問い合わせたが、まだ回答がない」とも説明。「制度を固める前に自治体や現場の声を聞き、想定される課題をクリアにするプロセスが丁寧でなかった」と苦言を呈し、9月中旬以降に見込まれる全国一律の制度導入に向けて検討を急ぐよう求めた。(田中陽一、高田康夫)
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