地震や風水害など災害の具体的な被害を想定した防災訓練を行っている市区町村が全体の半数にとどまっていることが、「人と防災未来センター」(神戸市中央区)の調査で分かった。人口規模が小さい自治体ほど実施率が低く、専門家は「災害が起こると対応できない恐れがある」と指摘する。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震などが発生する懸念は年々高まる。調査は大災害への自治体の備えや過去の対応を分析するため、2020年3~6月に実施。全国の市町村と東京23区の1741自治体を対象にし、750自治体から有効回答を得た。
結果、被害想定を盛り込んだ訓練を行っていたのは50・8%。人口規模別では30万人以上の自治体が79・1%と高かった一方、1万人未満の自治体では39・7%しかなかった。
被害想定は、都道府県などが地震や津波、風水害などの人的・物的被害を算定したもの。例えば、30年以内の発生確率が70~80%とされる南海トラフ地震については国の検討結果をもとに、兵庫県も2014年に被害想定を公表した。県内の最大震度は7で、最悪の場合、死者は約2万9100人、津波による浸水も6141ヘクタールに達する。神戸市では年に1度、こうした予測に基づいた総合防災訓練を行っている。
同センターの寅屋敷哲也・主任研究員=企業防災=は「具体的な被害を想定して訓練することで、職員が災害対応に慣れておく必要がある」と指摘。今回の調査結果に「規模の小さな自治体は防災担当の職員が少なく、人手不足に陥っている。都道府県が支援したり、大学や研究機関と連携したりする方法を模索すべき」と話す。
研究成果は来年3月の最終報告を予定している。(上田勇紀)
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