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交流会でビンゴゲームを楽しむウクライナからの避難者ら=神戸市須磨区
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交流会でビンゴゲームを楽しむウクライナからの避難者ら=神戸市須磨区
交流会であいさつする吉椿雅道さん
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交流会であいさつする吉椿雅道さん

 神戸の非政府組織(NGO)「CODE(コード)海外災害援助市民センター」が、日本に避難してきたウクライナ人への支援に力を入れている。慣れない異国での孤立を防ごうと野菜を届けたり、交流会を開いたり。活動のモットーは「一人一人に寄り添う」。原点は、被災者のつぶやきに耳を傾けた27年前の阪神・淡路大震災にある。(上田勇紀)

■バーベキューで親睦

 8月28日、神戸市須磨区の奥須磨公園に約70人が集まった。うち約40人はウクライナから避難してきた人やその家族、友人たちだ。

 ビンゴゲームで盛り上がり、バーベキューの肉や野菜をほおばる。ウクライナの人たちも手料理を持ち寄り、振る舞った。ロシア語を学ぶ大学生も手伝いに訪れ、参加者は多様な言語で親睦を深めた。

 「きょうは森の中で、いい気持ち。たくさんの人に会えて楽しい」。緑豊かな母国を思い出したのか、イローナ・ザイテェバさん(30)が笑顔を見せる。ウクライナからポーランドを経由し、知人を頼って6月に神戸に来た。

 古里に残った父は空襲警報のたびに地下へ逃げる日々。自身もいつ母国へ戻れるか分からない。そんな不安をひととき、忘れることができた。

■つぶやきから本音くみ取る

 CODEは国外の災害被災地支援のほか、国内の外国人支援にも取り組む。傷があるなどして市場に出回らない規格外野菜を届ける「MOTTAINAI(もったいない)やさい便」もその一つ。5月、ウクライナ避難者にも配達を始め、現在は週2回ほどのペースで10組に手渡す。

 顔なじみになるうち、当初は言葉少なだった避難者らが本音をつぶやくようになった。

 「疲れた」

 5月下旬、事務局長の吉椿雅道さん(54)が野菜を届けると、母国から弟らを呼び寄せた女性がぽつり。日本語が話せず、一人では買い物もままならない弟たちに付きそううちに不安が募り、もともと神戸で暮らす女性は精神的に追い込まれた様子だった。「バーベキューでもやろうよ」。吉椿さんが提案し、今回の交流会が生まれた。

■27年前と同じ光景

 脳裏に27年前の光景が重なった。阪神・淡路大震災が起こり、出身地の福岡から友人のいる神戸にボランティアとして駆けつけた。

 冬の避難所で震える高齢者らを見て、始めたのが足湯だ。湯の入った容器に足をつけてもらい、手をもむ。気持ちのほぐれた被災者が次第に困っていることを打ち明けるようになった。「持病の薬がない」「お金が底をつきた」。一人一人の声を拾い、次の支援へつなげた。

 「ウクライナの人たちが置かれた状況も一人一人違う。27年前と根っこは同じ」。交流会の参加者を見ながら、吉椿さんは言う。

 子どもの将来のため、母国へ帰った親子がいる。ロシアに制圧された南東部マリウポリの古里を思い、涙に明け暮れる女性がいる。「声を聞いて、それぞれに合った寄り添い方をしたい。ウクライナの人たちが野菜づくりを楽しめる農園もつくれたら」。吉椿さんは長期的な心の支援に知恵を絞る。

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 CODEは活動支援金を募っている。郵便振替00930-0-330579。加入者名は「CODE」。通信欄に「もったいない野菜」や「ウクライナ支援」と記す。CODETEL078・578・7744

【CODE海外災害援助市民センター】2002年、NPO法人として発足。前身は1995年1月17日の阪神・淡路大震災の発生2日後に立ち上がった「NGO救援連絡会議」。「困ったときはお互いさま」の精神で、ロシア・サハリン地震や中国・四川大地震など世界各地の被災地で支援活動を続けてきた。2002年にはタリバン政権が崩壊したアフガニスタンで初の紛争地支援に乗り出し、活動の幅を広げている。神戸市兵庫区。

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