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東京・上野動物園のジャイアントパンダの双子、シャオシャオとレイレイ(右)=26日(東京動物園協会提供)
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東京・上野動物園のジャイアントパンダの双子、シャオシャオとレイレイ(右)=26日(東京動物園協会提供)
1972年11月、一般公開されたパンダを見る人たち=東京・上野動物園
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1972年11月、一般公開されたパンダを見る人たち=東京・上野動物園

 日中の国交が正常化された1972年9月29日、記念に中国からジャイアントパンダ2頭の寄贈も発表された。受け入れ先となったのは東京・上野動物園。生態もほとんど分からず手探り状態の中、中国側の協力も得て、飼育方法を確立し繁殖技術を高めてきた。大橋直哉教育普及課長(48)は「試行錯誤の結果として今がある」と語る。

 同園に雄カンカンと雌ランランの受け入れ要請があったのは72年10月5日。28日の来日まで約3週間に迫っており、園では急きょ、トラ用だった飼育施設を改造し、職員が餌の竹やササを求め奔走した。大橋課長は「餌の量さえ情報がなかった。日中友好の看板を背負って来るパンダを世話する重圧はすごかったのでは」と推し量る。

 11月5日の一般公開初日は約3千人が並び、約2キロの列ができた。大勢の観客に驚いたのか、2頭は興奮状態で施設内を駆け回ったあげく口から泡をふき、観覧時間を短縮する事態となった。

 この教訓は、パンダにストレスを与えないよう公開まで十分に時間を取るという今の飼育方針につながっている。昨年生まれた双子の雄シャオシャオと雌レイレイも、一般公開は誕生の半年後。公開前には飼育員が観客役となり、慣れるための練習を繰り返した。大橋課長は「丁寧に段階を踏むようにした。昔の経験が生きている」と話す。

 パンダは現在、繁殖研究目的での中国からの貸与となっている。妊娠できる期間は1年のうちわずか2~3日のため、同園は、日々の体調管理の記録を中国側と共有。飼育員を現地に派遣するなどして、繁殖技術の向上に取り組んできた。

 その結果、2012年には同園初の自然交配で、雄リーリーと雌シンシンの間に子どもが誕生(6日後に死亡)。その後も17年の雌シャンシャン、昨年の双子と自然交配での出産が続いている。

 出産には中国の研究員が立ち会うことになっているが、同園初の双子が誕生した際は、新型コロナウイルスの影響で来日できず、交流サイト(SNS)で動画や写真を共有し24時間態勢の支援を受けた。母親は1頭しか世話しないことが多いため、保育器に入れたもう1頭と定期的に交代させる必要があり、そのタイミングや人工乳の量などについても細やかな指導があった。双子はすくすくと育っている。

 これまでに中国から迎えたのは計7頭。生後間もなく死んだ2頭を含め計7頭が誕生した。大橋課長は「温暖化などで生息地域が減り絶滅危機にあることを知ってもらい、守るために何ができるか考えるきっかけづくりを続けたい」としている。(共同)

   ◇   ◇   ◇

■神戸にはタンタン屈指の人気

 神戸市灘区の市立王子動物園にも2000年7月、日中共同の飼育研究を目的に、2頭のジャイアントパンダが来園した。繁殖は成功しなかったが、雌のタンタンは今も園内で暮らし、屈指の人気者として愛されている。

 20年7月に借り受けの期限を迎えたが、新型コロナウイルス禍などで今年12月末まで延長された。今月16日に27歳の誕生日を迎えたタンタンは現在、心臓疾患の治療と体調管理のため、観覧が中止されている。(小川 晶)

【日本のパンダ】ジャイアントパンダは中国・四川省などの竹林が多い地域に生息。絶滅の恐れがあり、ワシントン条約で商取引が禁止されている。上野動物園に来たカンカンとランランは中国から日本への寄贈だったが、現在は全て繁殖研究目的の有償貸与。日本で生まれた子も含め所有権は中国にある。

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