江戸時代に発展した三味線音楽「長唄」の唄方、松永忠次郎(ちゅうじろう)さん(55)=東京都=が講師を務める神戸・元町の「イトカワ長唄・三味線教室」が、じわりと人気を集めている。第一線で舞台に立つプロからマンツーマンで受けられる指導が好評で、開講から約1年で教え子が約40人に。松永さんは「神戸では長唄を教える教室は少なく、予想以上に反応が良かった。今後も日本文化の魅力を広めてきたい」と話している。(竜門和諒)
松永さんは唄方の父の影響で幼少期から舞台に立ち、高校卒業後に本格的に長唄の道へ。主に歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんの舞台に出演するほか、海外の歌舞伎公演などにも参加する。
会場を貸す神戸・元町の着物店「イトカワ」の社員に松永さんの弟子がいた縁で、同店が教室開催を依頼した。年々縮小する着物市場の間口を広げようと、同店では茶道や着付け教室も開いており、武田貴志社長は「伝統文化に触れてもらう機会を増やすことで、長い目で着物の購入にもつながれば」と狙う。
教室は、松永さんの舞台スケジュールの合間を縫って毎月数日間まとめて開く。体験会や三味線の貸し出しもあり、気軽に始められるのも魅力だ。
性別や年齢、居住地もさまざま。京都外国語大3年の中務光夏さん(21)=神戸市灘区=は、小物を求めて買い物中に案内され、体験会から参加した。幼少期は舞妓(まいこ)に憧れ、現在も大の歌舞伎好き。三味線にも以前から関心はあったといい、昨年秋に習い始めて1年でめきめきと腕を上げている。
◇
10月8日午後、イトカワ3階の和室で稽古があった。部屋には松永さんと中務さんの2人が座り、それぞれに三味線を抱える。「手首を90度に曲げて」「そうそう、良くなった」。部屋のぴんとした空気が、リズム良い弦の響きに徐々にほぐされていく。
同月末には受講生の家族らを招いた発表会が控えているという。「めっちゃ難しい」と気が弱る中務さんに、松永さんは「前回より上手になってる」とにこりと背中を押す。この日は2こま約1時間半、詰めの調整に汗を流した。
中務さんは松永さんの舞台にも足を運ぶ。「これまでは役者ばかりに目が行っていたが、習い始めてからは、支える唄の存在がとても大切だと気付くようになった」。舞台の楽しみ方が増えたと感じている。
松永さんは「三味線や歌舞伎などの芸事は、世代を超えて同じ話題で話すことができる。若い人も気軽にチャレンジしてみてほしい」と話している。
同店では受講者を募っている。稽古は1回約40分の完全予約制で、長唄か三味線かを選ぶ。入会金1万円、稽古1回5千円。イトカワTEL078・332・0301
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