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記者会見する土師守さんと井関勇司弁護士(右)=28日午後、神戸市中央区(撮影・秋山亮太)
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記者会見する土師守さんと井関勇司弁護士(右)=28日午後、神戸市中央区(撮影・秋山亮太)
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 事件から25年。驚愕(きょうがく)の事実が待っていた。1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件で、14歳で逮捕された「少年A」の全事件記録を神戸家裁が廃棄していた問題。事件で次男の土師(はせ)淳君=当時(11)=を亡くした父の守さん(66)は28日、家裁に調査を求めた。「当事者が声を出さない限り、大きな力にならない」。これ以上、重要な事件記録を失わず、保存する。土師さんと代理人の弁護士は感情を抑え、そう強調した。

 小学6年だった淳君が殺害されたのは97年5月。息子が殺害された理由はおろか、非公開の少年審判で医療少年院への送致が決まった少年Aの動向はうかがいしれなかった。当時少年事件は、被害者の遺族すら審判の傍聴や意見陳述ができなかった。

 家裁に残された供述調書や精神鑑定書、調査官の社会記録などが見られたら、少しでも真相に迫れるのでは-。98年8月、少年と両親に損害賠償を求める民事訴訟を起こした。訴訟で争う点が出てくれば見られなかった事件記録の情報が開示される。ただ加害者の少年Aの側が争わず責任を認めたため、記録を見る機会はなかった。

 少年Aは2005年に退院し、現在は社会復帰している。彼からの手紙は途絶え、今年、全事件記録の廃棄が分かった。

   ◆

 28日午後、土師さんは硬い表情で弁護士2人と神戸家裁に入った。続く記者会見では、最高裁が史料的価値の高い記録は永久保存を定めている点を踏まえて「ガバナンス(統治)ができていない」と指摘した。

 「事件記録は遺族にとって非常に重要なもの」。事件と向き合った日々を振り返り、そう表現する。いつか法改正で閲覧できる日が来るという「淡い希望」がついえ、視線を落として「いいかげんにしてほしい」と嘆いた。「重要なのは十分な管理のもとに保存すること。そのために調査と検証が必要だ」と訴えた。

 また、事件直後から代理人を務める井関勇司弁護士は会見で、少年Aの審判を担った故井垣康弘元判事(今年2月に死去)に記録の開示を求めたが実現しなかったと明かした。井関弁護士は「記録は(被害者の)淳君が生きた証しでもある。今、Aはどこにいるか分からず、記録もなくなった」と影響を語る。

 土師さんは「司法の信頼」も口にした。「記録はデジタル化もできる。検証のためにも事件は原則、永久的に保管していくべきだ」(小谷千穂、篠原拓真)

成人未満失われた事件記録
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