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コロニーで幼鳥に餌を与えるダイサギ=2018年撮影(姫路科学館提供)
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コロニーで幼鳥に餌を与えるダイサギ=2018年撮影(姫路科学館提供)
今年6月ごろ、手柄山中央公園の山腹で営巣する数百羽のシラサギ(姫路市立手柄小学校提供)
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今年6月ごろ、手柄山中央公園の山腹で営巣する数百羽のシラサギ(姫路市立手柄小学校提供)
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 「白鷺城」の愛称がある世界文化遺産・国宝姫路城の2キロ南、兵庫県姫路市が管理する手柄山中央公園にシラサギの「楽園」がある。山腹に毎年春から秋にかけ、数百羽が繁殖するコロニー(集団繁殖地)を作り、子育てに励んでいる。ところが、徐々に巨大化し、ふん害が目立つように。同公園は再整備工事を進めており、市は市鳥であるシラサギを追い払うこともできず、共生に向けた策に頭を悩ませている。(井上 駿)

悩ましくも愛らしい存在

 シラサギは白いサギ類の総称。外敵から身を守るため木の上で集団営巣し、オスとメスが交互にひなに餌を与えて巣立ちを待つ。

 現在のコロニーは、手柄小や手柄幼稚園の道路を挟んで西側に位置する。都市部にあるのは珍しく、住宅地と距離があり、餌場となる船場川が近くを流れる好立地。アオサギやコサギ、チュウサギなど6種類が約200の巣を作る。

 長年、市内のシラサギを調査している姫路科学館学芸員の森田俊司さん(65)によると、もともとアオサギが数十羽のコロニーを形成していたが、10年ほど前に姫路港の近くにあった別のコロニーと合体し、巨大化した。5~6月には幼鳥を含めて最大千羽近くに達するという。

 コロニーの木々はふんで真っ白になり、周辺の学校にも影響は及ぶ。手柄小の満田誠校長によると、「ギャアギャア」という鳴き声のほか、ふんの臭いが広がったり、教職員の乗用車がふんまみれになったりする被害がやまない。同小は過去にシラサギとの共生を学ぶ授業を取り入れており、満田校長は「学校生活に影響はあるが、児童にとってはそれが日常」と話す。愛鳥家の観察スポットにもなっており、悩ましくも愛らしい存在という。

被害拡大懸念も「市鳥」だけに…

 同公園は陸上競技場や平和資料館など文化・スポーツ施設が集積し、市は新体育館や屋内プールの建設など再整備を進めている。さらに公園の北西側にはJRの新駅建設が決まるなど一大事業だ。コロニーがあるエリアは再整備の事業区域ではないものの、同小学校の南側には再整備の一環で多目的広場の造成に入っており、ふん害の広がりやシラサギが利用者に危害を及ぼさないか、心配する。

 市の担当者は「今以上に被害が拡大するのは見過ごせない。ただ、追い払うことは考えておらず、あくまで共生を目指す」とする。「シラサギが住宅地に近い別の場所に移って、ふん害が広がれば元も子もない。被害が減らせればいいが、名案はない」と打ち明ける。生態系を維持したまま悪影響を減らそうと、コロニーの木を間引いたり、残されている巣を一部撤去したりする策の検討を始めた。

「激減してからでは手遅れ」

 一方、シラサギは近くの市中央卸売市場で、さばいた魚の身の切れ端を狙って餌にしていたが、同市場は来春にも市南部に移転する。森田さんは「生態系が似たコウノトリのように、激減してから対策を取っても手遅れになる。卸売市場の移転など環境の変化は避けられず、温かく見守ってほしい」と考えている。

 ひなが巣立ち、コロニーは9月中旬、解消された。シラサギは今、姫路城の内堀や河川敷で悠々と生活している。

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