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佐藤精機の技術が詰まったネジ部分
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佐藤精機の技術が詰まったネジ部分
試料を各施設へ運ぶ輸送容器
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試料を各施設へ運ぶ輸送容器
NASA向けの容器製作を進める佐藤慎介社長(右から2人目)ら=たつの市揖西町土師
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NASA向けの容器製作を進める佐藤慎介社長(右から2人目)ら=たつの市揖西町土師

 探査機「はやぶさ2」のカプセルが地球に帰還して2年。小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った物質(試料)の分析を通じ、宇宙の謎に迫る発見が相次いでいる。その陰には、試料を守り、国内外の研究者のもとへ届ける特殊な容器の存在がある。手がけるのは従業員約40人の中小企業。その技術力は、米航空宇宙局(NASA)の目にも留まった。(段 貴則)

 試料輸送容器を製作するのは、創業67年の金属切削加工、佐藤精機(兵庫県姫路市、資本金1800万円)。容器はステンレス製で、直径、高さともに6センチの円柱型。手で容器を回して開け閉めする。容器内は真空で試料の粒子を入れて運ぶ。

 基本設計は、大型放射光施設スプリング8(佐用町)の運転・管理などを担う高輝度光科学研究センターが手がけた。すでに宇宙航空研究開発機構(JAXA)に約300個を納入。NASAに試料を届ける際にも使われた。

 試料を輸送、分析する際は、地球の物質から汚染されないように真空状態を維持する必要がある。地球上では手に入らない有限の試料であり、一粒でも無駄にできないため、すべての容器に不具合は許されない。

 そのため、容器製作には超高精度の加工技術を生かした。開閉するネジをミクロン単位で調整し、容器内を1カ月ほど真空状態に保ちつつ、かみこんで開閉できなくなるのを防ぐため、すべての容器でネジを精密に切った。また「より開けやすいように」という研究者の声を生かし、当初は4周だったネジを2周に減らし「社外秘の詰まった絶妙な締まり具合」を実現した。

 同社宛てに英文のメールが届いたのは6月。文面には「NASA」の文字や所在地が記されていた。佐藤哲子常務は「本当にNASAから?」と確証が持てず、同センターなどに協力を求めた。NASAが早くから容器に関心を示していたといい、容器10個の納品が決まった。現在、製作中で年内に納品する。

 佐藤常務は「納品の際は『感想を聞かせて』とメッセージを添え、NASAの声を改良に役立てたい」。佐藤慎介社長も「ネジ部分はデータを積み上げて製作するエンジニア魂がこもっている。NASAにも探査機がある。航空宇宙分野のものづくりは、今後も地方の中小製造業にとってチャンスが多いはず」と話している。

【はやぶさ2】宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機。2020年12月、52億キロに及ぶ宇宙の旅を経て、太陽系ができた46億年前の痕跡が残るとされる小惑星「りゅうぐう」で採取した物質を地球に届けた。JAXAを交えた複数の研究チームが採取物質を分析。東北大のチームは試料から炭酸水を検出し「地球の海は隕石(いんせき)などに含まれる水が起源」とする説の可能性を高めた。東京大などは試料に含まれていた気体を検出。はやぶさ2の帰還が、小惑星の気体をそのまま地球に持ち帰る世界初の偉業となった。

■精巧さ触って確認を 「はやぶさ2」展に容器出展

 佐藤精機は、25~29日に姫路市神屋町のアクリエひめじで開かれる「小惑星探査機はやぶさ2 帰還カプセル特別展」に出展する。小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った物質を国内外の研究機関などへ運ぶ同社の試料輸送容器を展示。精巧な作りを来場者に手で触れてもらう。

 同展は姫路市などの主催。帰還カプセルの実物公開に加え、無重力空間の疑似体験コーナー(26~27日、500円)などもある。

 入場無料。午前10時~午後5時(25日は午後3時~午後9時)。事務局TEL080・2457・7799

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