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作中に登場するスナック「はぁばぁ」とよく似た建物がある二宮商店街の一角。ついつい人情味あふれるママを探してしまう=神戸市中央区琴ノ緒町4
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作中に登場するスナック「はぁばぁ」とよく似た建物がある二宮商店街の一角。ついつい人情味あふれるママを探してしまう=神戸市中央区琴ノ緒町4
掬星台から眺める夜景と「リアルすずめの戸締まり」?=神戸市灘区摩耶山町
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掬星台から眺める夜景と「リアルすずめの戸締まり」?=神戸市灘区摩耶山町
JR新神戸駅も登場。赤いシクラメンは映画仕様だ=神戸市中央区加納町1
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JR新神戸駅も登場。赤いシクラメンは映画仕様だ=神戸市中央区加納町1

 11月に公開されたアニメ映画「すずめの戸締まり」で描かれた神戸の街並みを実際に見ようと、「聖地巡礼」と称して訪れるファンが増えている。ミナト神戸ならではの景観だけでなく、「まさかここが」と地元民も驚くスポット、映画の世界観そっくりの仕掛けも。ただし、聖地巡礼を巡っては映画の公式サイトなどが近隣住民への配慮を強く求める要望を出している。注意しつつ、筆者もいくつかの聖地に足を運んだ。

 ■鈴芽を出会わせたかった

 同作は、高校生のヒロイン岩戸鈴芽が災いを招く「扉」を閉めながら、全国を旅するロードムービー。地震が大きなテーマで、阪神・淡路大震災があった神戸も重要な舞台として登場し、鈴芽は街の人たちと心を通わせ、成長していく。

 実際に神戸を訪れたという新海誠監督は公開にあたり、本紙の取材に「かつて大きな災害に遭ったが、それを乗り越え、ごく普通の生活を送っている人たちと鈴芽を出会わせたかった」と思いを寄せた。

 ■そっくりな商店街

 旅の途中、鈴芽は神戸に住む女性二ノ宮ルミと出会い、神戸にやってくる。宿のあてもない鈴芽は「九宮筋商店街」という商店街でルミが切り盛りするスナック「はぁばぁ」で一晩を過ごすことに。店の外観や通りの雰囲気は、JR三ノ宮駅に近い二宮商店街(神戸市中央区)の一角にそっくりだ。

 「気の良いママやスナックが実在するのだろうか」と想像を膨らませたが、どうやら「はぁばぁ」はないようだ。「そこは確か、果物屋さんだったね。何十年も前の話だけど」。近所の精肉店の男性(52)が教えてくれた。

 長らく商売を続ける男性にとって道行く人は顔見知りばかりだったが、映画が公開されると、カメラを持った若者の姿を頻繁に見るように。「映画のおかげでうちにお金が落ちることはめったにないけど、にぎやかになるだけでもありがたいな」

 ■神戸のあちこちに、あの扉?

 災いをもたらす「扉」は夜の神戸にも現れる。鈴芽は山中の古びた遊園地で、扉を閉めて災いを封じ込める「戸締まり」に挑む。この遊園地は実在しないが、SNS(交流サイト)上では、アトラクションの形状や配置から道の駅「神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」(同市北区)の遊園地「神戸おとぎの国」ではないかと推測する声もある。

 遊園地のシーンでは、神戸の夜景が圧倒的な映像美で浮かび上がった。答え合わせをする思いで、神戸市灘区の摩耶山頂付近の展望広場「掬星台」を訪ねた。星が瞬く夜空と、その下で煌々と輝く街の明かりに感動を覚えたのもつかの間、居合わせた見物客の言葉に耳を疑った。「すずめの扉あるやん」。

 視線の先に、確かに「扉」があった。数年前にも訪れたことがあったが、扉なんてあった記憶はない。スマートフォンで検索すると、11月中旬に神戸市が設置したものだと分かった。見物客の「映画に合わせた粋な計らいやね」という言葉に深くうなずく。

 後日、市観光企画課に真意を尋ねたが、「コラボとかではなく、たまたま」とのこと。神戸市などが記念撮影スポットとして各地をPRする企画「Door to KOBE」の一環で、掬星台の他にメリケンパーク(同市中央区)、マリンピア神戸(同市垂水区)など計6カ所で展開している。ただSNS上では映画と関連づけた投稿も多く、担当者は「いろんな意味で楽しんでもらえているみたいなので、タイミングに感謝したい」。ちなみに、ドアの設置期間は1月中旬までとのこと。

 ■あえて映画に寄せてみた

 ルミが鈴芽を送り出すのは、JR新神戸駅前ロータリー。タイルや点字ブロック、遠くに見える木々など再現度の高さに驚く。

 ここでは、「聖地」化を歓迎する地元の熱意を感じた。建物に沿って等間隔に並ぶ花壇の花の色は、管理する神戸市公園緑化協会が映画の設定にあえて寄せたそう。

 同協会によると、公開前は別の花だったというが、劇中に出てくる赤い花と整合性を取るため、赤いシクラメンに植え替えたという。担当者は「時期によって花の種類を変えているので、ロケ中は赤い花だったのだろう。せっかくファンの方も多く来ていただけているので、細かいところまでこだわってみました」と自信を見せる。

 ほかにも、SNSやネット上には、劇中に登場したとされるファストフード店や駅、商店街や市場などを「聖地」とする情報が多く寄せられている。すでに劇場に足を運んだ方はもちろん、そうでない人も予習する気持ちで巡ってみるのはいかがだろう。作品を通じて、ミナト神戸の新たな一面に触れられるはず。この街をもっと好きになれるはず。

すずめの戸締まり】人気アニメ映画「君の名は。」(2016年)、「天気の子」(19年)を手がけた新海誠監督の最新作。宮崎県に暮らす17歳の高校生岩戸鈴芽が全国を旅し、災いをもたらす「扉」を閉じていく冒険の物語。12月25日に興行収入が100億円を突破した。

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