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おむつ替えの時間。明石市の市立保育所では2020年6月に使用済みおむつの家庭への持ち帰りを廃止した=同市松が丘3、市立松が丘保育所
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おむつ替えの時間。明石市の市立保育所では2020年6月に使用済みおむつの家庭への持ち帰りを廃止した=同市松が丘3、市立松が丘保育所
この保育所では現在、専用のごみ箱を設置し、おむつを回収する。保育士の作業の煩雑さも解消されたという=明石市松が丘3、市立松が丘保育所
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この保育所では現在、専用のごみ箱を設置し、おむつを回収する。保育士の作業の煩雑さも解消されたという=明石市松が丘3、市立松が丘保育所

 保育所・園から家庭に持ち帰るのが長く当たり前と思われてきた使用済みおむつ。厚生労働省が1月、保育所での処分を推奨する方針を初めて表明し、「助かる」「ありがたい」などと保護者らから歓迎の声が上がる。なぜこのタイミングなのか。持ち帰りにどんな問題があり、保育所での処分のメリットは何なのか。

■まとめて処分「気持ちに余裕」

 兵庫県明石市東部の閑静な住宅街にある市立松が丘保育所。1月末に訪問すると、お昼寝を終えた園児のおむつ替えが始まったところだった。保育士が一人一人に声をかけながら手際よく新しいおむつをはかせていく。

 同市では2020年6月、全ての市立保育所で家庭への持ち帰りを廃止。専用のごみ箱にまとめて廃棄し、業者が毎日回収する。

 保育士の玉野由紀さん(44)は「以前は棚に園児ごとの引き出しを設けて、それぞれの袋に分別回収していた。廃棄袋を間違えないか気を使っていたが、今では気持ちに余裕ができた」と打ち明ける。

■「持ち帰り」が4割

 加藤勝信厚労相は先月23日に会見し、「持ち帰りがなくなるのは保護者の大きな負担軽減。保育所も使用済みおむつを子どもごとに分ける業務がなくなる」と方針について説明、全国の自治体に通知した。

 保護者の負担とは何なのか。

 松が丘保育所に2歳の次男を預ける明石市の会社員(37)は、小学1年の長男も6歳までお世話になり、持ち帰りを経験した。

 「お迎えの時、子どもを抱っこし、もう一方の手で重たいビニール袋を受け取る。仕事で疲れている時はこたえた」と振り返る。

 今回、厚労省の判断を後押ししたのは、保護者の負担軽減を求める声だ。

 民間の育児支援団体「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」(大阪市)が昨年2~3月、全国の市区町村の担当者に調査。39%に当たる571の自治体で持ち帰っていることが分かった。これを踏まえ、同会は昨年9月、厚労省に対して1万6千人のオンライン署名とおむつの持ち帰りをなくす要望書を提出した。

 10月には、同会の調査をベースに、厚労省が一部の自治体を対象に追加調査。使用済みおむつを巡る方針表明へとつながった。

■感染症のリスクも

 使用済みおむつを持ち帰ることは衛生面でも問題がある。神戸常盤大(神戸市長田区)の三浦真希子特命講師は、使用済みおむつを介して腸管出血性大腸菌O157やノロウイルスなどに感染する可能性を指摘。「子どもごとの分別、保護者への手渡しと作業が煩雑になれば、感染リスクは高くなる」

 デメリットが目立つ持ち帰りだが、これから保育所での処分は進むのか。

 「-なくす会」の調査では、持ち帰りにする理由として最も多かったのが「子どもの体調管理のため」(43%)で、「使用済みおむつの保管、回収の手配が難しい」(14%)が続く。

 体調管理について、同会の東ネネさんは(29)は、保育士とのコミュニケーションで解決できるとする。

 一方、回収を巡っては、明石市の場合、業者を募集し、毎日の回収を実現したことが持ち帰りを廃止する決め手になったという。だが、地域によっては業者が見つからないところもあるだろう。処分費用を誰がどのように負担するのかという問題も新たに発生する。

 東さんは「保育所での処分は少しずつ増えていくと思われるが、課題もある。解決するには国などの支援も必要になるだろう」とし、「これを機に、多くの人が使用済みおむつの問題に関心を持ってもらえれば」と話す。

     ◇     ◇

■処理費、施設の7割運営費で負担

 「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」が昨年2~3月、全国の1741市区町村の担当者に実施した調査では、保護者による使用済みおむつの扱いを巡って、東日本と西日本で差があることが浮き彫りになった。

 持ち帰りをしていないのは、723の自治体で、中でも東京23区は全ての施設が該当するなど東日本で保育所での処理が多かった。一方、持ち帰りを実施する市町村の割合では、滋賀県が89%(1位)、京都府は73%(4位)と関西の2府県の高さが目立った。42%の兵庫県は25位だった。

 反対に県内で持ち帰りを廃止しているのは明石市のほか、神戸市や姫路市、伊丹市などだった。

 一方、同会の調査をベースに、厚労省が昨年10月、保護者に持ち帰りを求めていない723の自治体の施設に行った追加調査では、処理費用について運営費で負担が69・6%と最も多く、保護者が7・7%、自治体が13・7%だった。保護者負担の場合、月額100~700円台を徴収していた。

 「-なくす会」の東さんは「自治体で差はあるものの、保育所での処理は意外と安い費用で実現できる可能性がある」と指摘している。

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