赤ん坊用の治療ベッドがずらりと並んでいた。ここは兵庫県立こども病院(神戸市中央区)の小児集中治療科(PICU)だ。
今月7日。このフロアの一角にある個室に、医師や看護師ら約20人が集まった。ベッドの上には子どもの患者を想定した人形。枕元に立つ脳死判定医役の医師が告げる。
「これより脳幹反射消失の確認をします」
同病院では毎年、臓器提供を前提とした脳死事例のシミュレーション研修を行っている。臓器提供に至ったことはまだないが、感染症による脳症や溺水などで脳死状態になったと考えられる子どもは、毎年数件のペースで搬送される。
PICUの青木一憲医師(43)は「脳死判定が必要な場面は必ず来る。準備はしておかなければ」と力を込める。
◇
2022年12月、18歳未満では兵庫県内で初となる脳死下での臓器提供があった。この年の未成年のドナー(提供者)は9件と、全体(93件)のおよそ1割。新型コロナウイルス禍による減少傾向からは回復しつつあるが、欧米の実績にはほど遠い。
若年層の臓器提供はなぜ難しいのか。兵庫県臓器移植コーディネーターの杉江英理子さん(44)は「親が子どもの脳死を受け入れ難いことに加え、医療従事者は家族へいつどのように臓器提供の話を持ち出せばいいか苦悩して言い出せないケースもあるのでは」と話す。
特にハードルを高くさせているのが虐待の確認だ。18歳未満がドナーになるには、被虐待児でないことを示す必要があり、医療機関は児童相談所などに虐待の通報歴を照会しなければならない。
「悲嘆する家族に対し、虐待の疑いをかけるような形になりかねない。医療者が悩む気持ちは理解できる」と杉江さん。臓器提供について家族に話すかどうかは、それぞれの病院や医療チームの判断によるのが現状という。
◇
県立こども病院は20年12月から、脳死の可能性がある全てのケースで、臓器提供という選択肢があり得ることを家族に説明するようになった。
きっかけは、心肺停止で搬送され、約1週間後に亡くなった10歳男児の家族の言葉だ。男児は救命の見込みがなく、終末期を家族と過ごした。亡くなった後に親から「臓器提供の道はなかったのだろうか。考えてはいたが聞きにくかった」と打ち明けられたという。
医師の青木さんは「親がわが子の死を前提にして臓器提供の話を切り出すのは難しい。医師から家族に説明する必要性を感じた」と振り返る。
それまでは家族から申し出があった場合にのみ説明していたが、病院内で合意を得て方針を転換した。
心がけているのは、移植のあっせんではなく、終末期の選択肢の一つとして提示することだ。
青木さんは言う。
「死生観や終末期の過ごし方などは人によって考え方が異なり、正解はない。家族にとって納得がいく終末期の在り方を、一緒に考えるという姿勢が求められる」
【臓器提供件数】日本では臓器移植希望者が約1万5千人いるのに対し、移植を受けられるのは年間約400人にとどまる。国際的に見ても日本の臓器提供者数は低調で、人口100万人当たりの提供者数を比べると、米国は日本の68倍、韓国は14倍に相当する。
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