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今シーズンの運航開始に向けて準備するかすみ海上ジオタクシーの「慎雄丸」=20日午前、兵庫県香美町香住区境(撮影・長谷部崇)
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今シーズンの運航開始に向けて準備するかすみ海上ジオタクシーの「慎雄丸」=20日午前、兵庫県香美町香住区境(撮影・長谷部崇)

 北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が死亡・行方不明となった観光船沈没事故は23日で発生から1年。事故を受け、国土交通省は旅客船の安全対策をまとめ、法改正を図る。安全対策は66項目に上り、船舶設備では、新たに業務用無線や非常用の位置発信装置などが義務付けられる。ただ、兵庫の山陰海岸で海上観光タクシーを営む中小事業者は、地域性や大小を問わない一律の対策が事業を圧迫しかねないと不安視する。(竜門和諒)

 事故では、観光船「KAZU 1(カズワン)」が悪天候が予想される中で出港し、沈没した。実務経験がほとんどない社長が運航管理者を務めるなど、運航会社のずさんな実態が判明。運輸安全委員会の経過報告は、ハッチ(昇降口)の不具合や隔壁の密閉が不十分で浸水が拡大したと推定した。

 これを受けて検討委は昨年12月、66項目の再発防止策を公表した。運航管理者に対する資格試験の導入のほか、波や風の影響が少ない平水域以外の航行では、携帯電話は通信設備と認めず、業務用無線か衛星電話の配備や、非常用位置発信装置の積み込みを求める。小型旅客船の事業許可を、原則5年の更新制とするのも見直しの柱だ。

 「私たちが使うのは本当に小さい船。新たに機材を載せると人が乗るスペースが減って事業が成り立たなくなるんじゃないか」。船から山陰海岸の景観を楽しんでもらう「かすみ海上ジオタクシー」(兵庫県香美町)事業協同組合の西本庄作組合長(66)はこぼす。

 同組合は4月末~9月ごろ、漁師が案内し、奇岩や洞門などの景勝ポイントを巡るツアーを開催する。遊覧コースによっては海が穏やかな平水域の外にも出る。新たな船舶設備が求められそうだが、使用する3隻は旅客定員が5人程度で、機材を積むスペースは限られる。

 新型コロナウイルス禍で集客は打撃を受ける中、知床の観光船事故が追い打ちをかけた。昨年は事故後のゴールデンウイーク前後は予約のキャンセル続きとなり、売り上げは過去最低だったという。

 西本さんは「以前から安全第一でやっている。対策強化は理解するが、現場の状況に合わせた形で進めてほしい」と制度改正の行方を見守る。

 【知床観光船沈没事故】2022年4月23日、北海道・知床半島沖で乗員乗客26人を乗せた観光船「KAZU 1(カズワン)」が沈没、20人が死亡し、6人が行方不明になった。運航会社・知床遊覧船のずさんな管理体制が判明し、国の指導や監督の甘さも浮き彫りになった。国土交通省は知床遊覧船の事業許可を取り消し、海上保安庁は桂田精一社長らを業務上過失致死容疑で捜査している。

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