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(1)過密ダイヤ 厳密、秒単位の「運転時分」
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 宝塚駅発=午前9時3分45秒▽川西池田駅着=同10分10秒▽同駅発=同10分45秒▽伊丹駅発=同14分50秒▽尼崎駅着=同20分10秒。

 脱線事故を起こした宝塚発同志社前行き快速電車の「運転時分」。運転士には秒単位の運行スケジュールが割り当てられ、厳密な定時運行が求められている。

 JR宝塚線(福知山線)から大阪都心部への直行を可能にした八年前の東西線開通。それを機に、宝塚線のダイヤ編成は“攻め”に転じた。

 競合する阪急電鉄をにらみ、繰り返す列車増発とスピードアップ。約五十分かかっていた新三田-尼崎間の所要時間は現在、約三十五分。快速の導入もあるが、JR西日本誕生直後の一九八八年に比べれば、実に十五分も短縮された。二年前には、停車駅が増えたのに所要時間の同じ電車が登場した。

 必然的にダイヤは過密化する。尼崎駅では、阪神間の大動脈・神戸線と乗り継ぐことになる。大前提はもちろん、定時運行だ。

 しかし、運転士歴二十五年のベテランは、宝塚線のダイヤを「目いっぱいに運転しないと定時を守れない」とする。「二年前のダイヤ改正で、猪名寺-塚口間が一分三十五秒というむちゃな設定があった。遅れが続発して次の改正で少し緩和された」と明かした。

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 JR西日本は四月上旬、「ダイヤ改正のデータ集め」として、日常的に遅れている列車九本を秒単位で調べた。うち宝塚線では全体の半数近い四本が対象となった。その結果、朝の通勤時間帯の上りは平均で七十一-四十秒の遅れが確認された。満員の乗客の乗り降りに設定以上の時間がかかるためだった。

 遅れが発生した際、同社はマニュアルで「制限速度の範囲内で回復に努めること」を運転士に求めている。しかしある運転士は、「宝塚線ではいったん遅れが出ると、元の運転時分が厳しいから取り戻す余裕はほとんどない」と話す。

 脱線した快速電車は、伊丹駅でオーバーランし、一分半遅れで発車した。

 宝塚線で約十八年の運転経験がある幸(みゆき)義晴さん(41)は「厳しいダイヤのせいで伊丹駅到着までに遅れがあり、その焦りがオーバーランを生んだのでは」と推測する。

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 過密ダイヤを指摘されたJR西日本は、事故から六日目の四月三十日、真っ向から反論する見解を文書で示した。

 「(朝の通勤時間帯の)列車本数は二十一本であり、他の線区と比較しても特に多いとは考えておりません」

 その日、また一人乗客が亡くなった。犠牲者は百七人を数えた。

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 尼崎JR脱線事故は、鉄道の安全が、砂の上に立つようにもろいことを証明した。惨事を引き起こす要因は何だったのか。(企画報道班)

2005/5/2
 

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