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一歩ずつ 脱線事故負傷者の8年

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ドッグサロンを開業。犬との触れ合いに癒やされた=伊丹市北園3(撮影・笠原次郎)
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ドッグサロンを開業。犬との触れ合いに癒やされた=伊丹市北園3(撮影・笠原次郎)

ドッグサロンを開業。犬との触れ合いに癒やされた=伊丹市北園3(撮影・笠原次郎)

ドッグサロンを開業。犬との触れ合いに癒やされた=伊丹市北園3(撮影・笠原次郎)

 乗客106人が亡くなり、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った2005年の尼崎JR脱線事故。25日で丸8年となる。生死の縁をさまよった負傷者は、心にも深い傷を負い、この8年を懸命に生きてきた。今も心と体の傷に苦しめられる。一進一退を繰り返し、ゆっくりと歩む。

 「きれいになったね」。洗った犬の毛をドライヤーで丁寧に乾かし、増田和代さん(43)=伊丹市=が優しく話しかける。4月1日、念願だったドッグサロンを開店。尼崎JR脱線事故から8年たち、新たな人生を踏み出した。

 事故後、けがの後遺症や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだが、犬との出会いに救われた。

 事故当日、母の洋子さん(71)と共に3両目に乗車。愛知万博へ向かう楽しい旅路が一瞬にして暗転した。腰を骨折し、左足首も負傷。さらにPTSDと診断された。悪夢にうなされ、過呼吸やパニックに陥るようになり、10種類以上の抗うつ剤や睡眠薬を飲む生活が続いた。

 「薬を飲まないと症状が出る。けど飲むと人の裏表が怖くて全員敵に見えるようになり、出歩けなかった。あの時期のことはあまり記憶がない」

 どん底の毎日から救ってくれたのは一匹の犬との出会いだった。06年、「一人っ子で昔から犬が好き。癒やしになるかもしれない」と、シーズー犬、「ゆめ」を飼い始めた。

 「ふさぎ込んでいると近寄ってきて顔をなめてくれる。不機嫌な時はつれないし、いつでも駆け引きのない気持ちで接してくれる」。無邪気な存在が癒やしになった。気がつけば薬の量が減り、笑って話せるようになっていた。

 「救ってくれた犬に、感謝の気持ちを伝えたい」と、09年から、犬の美容師「トリマー」の資格取得を目指し、大阪市の専門学校へ通った。

 「電車に乗るのが怖かった。今も電車の遅れを表示するランプがホームについていると不安になる。だけど、大好きな犬に会えるんだってイメージすると乗れるようになった」。後遺症のため、かがむ姿勢がつらかったが、犬との触れ合いが痛みを忘れさせた。

 2年後に資格を取得すると、店舗探しへ。少しずつ前に進んだ。減ったとはいえ、今も数種類の薬を飲み、足腰に痛みが残る。ただ、以前のように落ち込んだりはしない。「もう悲しさは乗り越えた。この体とは一生の付き合いだけど、引きずらんとこって思えるようになった」

 店名は、ゆめの名前から「yume&fairy(ユメアンドフェアリー)」に。今、以前なら考えられなかった思いが芽生えている。「犬好きの人たちと家族のような関係になりたい。これからの出会いを思うと、幸せな気分になる」

 今日もまたゆめと共に、最高の笑顔で来客を出迎える。(黒田耕司)

2013/4/23

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