兵庫人 第12部 芸能東西
■まとう「神戸っぽさ」
「パーフェクトボディー」「完全八頭身」と驚嘆されるプロポーション。身長一七三センチ。長くて細い手足は、米国製バービー人形のようだ。
どんなに現実離れした役を演じても、不思議な説得力がある。「それにしても、極端なキャラクターばかり舞い込んできて」。女優佐藤江梨子(26)は、くすぐったそうに笑った。
生まれは東京。父の転勤で小学一年から中学一年まで神戸市東灘区で過ごした。リラックスすると自然に神戸弁が出る。普段着は、トラッドを基調にさりげなく遊んで自分らしさを出す。友人から「神戸っぽいね」と言われるのが心地よい。伸びやかな外見は、西宮出身の女優藤原紀香(36)と並んで、開放的な「神戸」のイメージに通じる。
自分の中の神戸とは? 「ファッションも、ライフスタイルも、程よく流行を取り入れた品の良さ。大好きです」
十四歳で阪神・淡路大震災を体験した。被災者を励ますFMラジオを聞いてパーソナリティーにあこがれ、芸能界へ。デビューはグラビアアイドルだった。やがて女優としてテレビドラマや舞台に進出。読書家でエッセーも書き、複数の雑誌連載を抱える。
大のフランス映画好き。難解で知られるゴダール監督に所属事務所「イエローキャブ」の真っ黄色の封筒でファンレターを書いた。巨匠もさぞびっくりしたことだろう。
念願だった映画主演は二〇〇三年、「プレイガール」で実現した。翌年の「キューティーハニー」では、原作漫画から抜け出したような戦闘美少女に扮(ふん)した。
昨年の「腑(ふ)抜けども、悲しみの愛を見せろ」で演じたヒロイン澄伽(すみか)は、故郷の田舎町に帰ってきた究極の自己中心女。ミニスカートにハイヒールで田んぼの中をずんずん歩き、次々騒動を起こす。狭いコミュニティーの閉塞(へいそく)した人間関係をブラックユーモアで描き、カンヌ映画祭国際批評家週間に招待された。
五月には、神戸国際会館こくさいホールで上演される舞台「空中ブランコ」で、思い込みの激しい看護師を演じる。強烈なせりふが飛び交うが、「人の深層に隠れている非日常の感情を口にするのが、だんだん気持ちよくなってきた」。
「戦争」を題材にした作品に出てみたいという。震災で「非日常」が日常のすぐそばにある現実を知った。
なぜ戦争が、核兵器が、なくならないのか‐。現実と仮想世界を漂うヒロインは、生身の自分が発する「素朴な疑問」に向き合う時を待っている。(敬称略)
2008/3/2