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兵庫人 第22部 被災地からの発信

(1-1)学究たち 原発の耐震性に警鐘
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住民グループ主催の講演会で「原発震災」の危険性を訴える石橋克彦さん=宝塚市栄町、市立男女共同参画センター・エル(撮影・峰大二郎)
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住民グループ主催の講演会で「原発震災」の危険性を訴える石橋克彦さん=宝塚市栄町、市立男女共同参画センター・エル(撮影・峰大二郎)

住民グループ主催の講演会で「原発震災」の危険性を訴える石橋克彦さん=宝塚市栄町、市立男女共同参画センター・エル(撮影・峰大二郎)

住民グループ主催の講演会で「原発震災」の危険性を訴える石橋克彦さん=宝塚市栄町、市立男女共同参画センター・エル(撮影・峰大二郎)

■「震災は軽減できる」

 ハプニングは、会議の最終回で起きた。

 「国民への背信行為になるので委員を辞任する」

 二〇〇六年八月、東京。国の原子力安全委員会・耐震指針検討分科会委員で神戸大教授の石橋克彦(64)=現名誉教授=は途中で席を立った。原発の耐震指針の改定案を練る会合で、石橋は、自らの科学的確信と多数の公募意見を踏まえ、耐震基準をさらに引き上げるよう主張してきた。しかし、他の委員に聞き入れられなかった。異例の退席は「純粋に科学の視点で発言し行動する」信念からだった。

 約一年後。新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が被災。警告は重みを増した。

 地震発生の仕組みを総合的に研究する「地震テクトニクス」が専門。東大助手時代に提唱し、社会を動かした東海地震説で知られる。

 持論に基づき、阪神・淡路大震災の五カ月前に著した「大地動乱の時代」では、都市直下地震による建物損壊、液状化、延焼火災による被害、ライフラインの機能停止などを予測し、地震に強い分散型国土の実現を訴えていた。当時、旧建設省建築研究所の応用地震学室長だったが、震災後、神戸大勤務が決まった。

 あの時「起きてしまった」と思ったが、まさか自分がその被災地で講義するとは想像もしなかった。「直接、震災を体験していないのに、神戸の大学で地震学を教えていいのか。迷ったが、分散を主張している以上、私自身が首都圏を離れなければと決断した」と振り返る。一九九六年に着任後、研究や講義の合間を縫いながら、講演依頼や報道機関の取材に積極的に応じ、徹夜もいとわず論文や寄稿文の執筆に取り組んだ。

 阪神・淡路以降、大地震が相次ぐ。石橋は「日本列島のほぼ全域が地震活動期に入った」と指摘し、学生にこう説く。「地震と震災は違う。地震は自然現象だから止められない。しかし、地震によってもたらされる社会的災厄である震災は社会現象だから、人間の努力で軽減できる」。地震被害と放射能災害が複合する「原発震災」を警告し、「暮らし方を自然と共生する方向に見直す必要がある」と語る。

 昨年三月の定年退職後も神戸に暮らし、現在、新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委の小委員会委員。停止が続く柏崎刈羽原発の近くに巨大な海底活断層の存在を指摘、運転再開への動きに警鐘を鳴らす。阪神・淡路から間もなく十四年。被災者の苦闘を思い、声を上げ続ける。

 そして「もの申す」学者がもう一人。神戸大教授の塩崎賢明(よしみつ)(61)=都市計画、住宅政策=は、行政主導の復興事業に疑問を呈し、多くの被災者の共感を得た。(敬称略)

2009/1/4
 

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