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「わしら、ドラマの『Gメン’75』みたいやのう」と笑う小林温さん(中央)と仲間たち=宍粟市山崎町、山崎木材市場(撮影・峰大二郎)
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「わしら、ドラマの『Gメン’75』みたいやのう」と笑う小林温さん(中央)と仲間たち=宍粟市山崎町、山崎木材市場(撮影・峰大二郎)

「わしら、ドラマの『Gメン’75』みたいやのう」と笑う小林温さん(中央)と仲間たち=宍粟市山崎町、山崎木材市場(撮影・峰大二郎)

「わしら、ドラマの『Gメン’75』みたいやのう」と笑う小林温さん(中央)と仲間たち=宍粟市山崎町、山崎木材市場(撮影・峰大二郎)

 7月上旬、宍粟(しそう)防災センター(宍粟市山崎町)の一室。体格の良い男たちが顔をそろえた。

 「兵庫県指導林家会(りんかかい)」の面々で、この日は年に1度の総会。地元宍粟や但馬、丹波を中心に94人が名を連ねる。いずれも業界のリーダー的存在だ。自伐(じばつ)林家の小林温(おん)さん(62)=宍粟市一宮町=が会長を務める。

 「木材需要は上がっています。市場の動向に注目してほしい」

 県林務課の担当者が、前のめり気味に呼び掛ける。しかし、出席者の表情は緩まなかった。

 長い冬の時代を知っているからだ。

 指導林家の認定制度は1978年度に始まった。80年、国内産の材価は過去最高を記録した。

 しかし、その翌年から潮目が変わる。安価な海外産が広がり、国内産の材価は加速度的に下降。かつて1立方メートル当たり3万円前後したスギは、今では1万円を切ることもある。

 「山(仕事)で汚れた心は、山で浄化せなあかんよ」

 一仕事終えた夜、宍粟の居酒屋に温さんと同業の4人が集った。

 熱弁をふるうのは、森林整備を手がける「グリーン興産」(一宮町)社長の石原武典さん(60)。仕事が山なら、趣味も山。翌日、岩手まで山登りに行くという。

 林業を支える同志。時に集まり、どうでもいい話で杯を交わす。

 どうでもよくない話も交じる。低空飛行を続ける材価の悩みだ。

 「木は何十年も前に先祖が植えたもんやで。キュウリやナスみたいにはいかんでねえ」

 長いスパンで営まれる仕事。だからこそ、景気やニーズに即応できない。もどかしさがにじむ。

 「あれ、楽しみに読んどったで」

 山崎木材市場(山崎町)で温さんを見つけ、西播磨県民局光都農林振興事務所(兵庫県上郡町)の主任春名貞夫さん(62)が親しげに話し掛けてきた。

 「林業新知識」という月刊誌で、温さんは昨年、全国の林業家の悩みに答える連載をしていた。後継者の育成や作業道のつくり方。経験を交えたコラムは「勉強になる」と評判を呼んだ。

 スギとヒノキの区別もつかないまま、山に飛び込んだ30年前。林業のあり方を語り合える仲間は年々増えていった。

 「いったん目立つと、どんどん役が振られるでな。体(てい)よう使われとるだけや」。わざとぶっきらぼうに言う温さん。

 この仕事は、競合が少なく、仲間意識が強い。業界の春も冬も、支え合いくぐり抜けてきた。

 彼らの絆の強さを目の当たりにしながら、根本的な疑問が頭をもたげた。

 なぜ、林業にこれほどの浮き沈みが生まれたのだろう。

(黒川裕生)

2015/7/27
 

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