幼稚園児40人の愛らしい歌やダンスに、年配の住民たちが相好を崩した。
10月24日。三田市つつじが丘(つつじ)に隣接する同市大川瀬(おおかわせ)の藍市民センターで、2日間の「あい藍フェスタ」が始まった。
地域の子どもたちやPTA、ボランティア、趣味のグループなどが、秋の一日を総出で楽しむ。会場には屋台が並び、これまで取材した人たちの姿もあちこちにあった。
歴史が30年足らずの町に、伝統的な「祭り」はない。代わりにこうしたイベントが住民をつなぐ。
翌週31日には、つつじが丘小学校で、住民が運営する「つつじ交流ひろば」主催の交流フェス。3年目の今年はハロウィーンと重なり、魔女やアニメのキャラクターに仮装した親子連れも目立った。
「珍しく子どもが多いねえ」と満足げにうなずくのは、同ひろば事務局長の今井昭夫さん(70)。屋内では住民でつくる劇団「ふるさと」がちゃんばら劇を繰り広げ、爆笑をさらっていた。
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さかのぼること3日前。どこで取材しても顔を見る河辺明彦さん(62)、惠子さん(64)夫妻と仲良くなり、家に泊めてもらった。
「今度の交流フェスに、すごい人が出ることになってん」
3人で鍋をつついていると、惠子さんが得意げな顔で言う。
市内の別のイベントで演奏していた外国人音楽家に魅了され、その場で出演交渉したらしい。このバイタリティーが惠子さんの持ち味だ。
高齢者の送迎などを手伝う住民ボランティア団体「アユート」でも中核。ふれあい喫茶では、みんなに推されて代表に就いた。
明彦さんは明彦さんで、1991年に開校したつつじが丘小の初代PTA会長。校長や先生らとスクラムを組み、新しい学校づくりに燃えた。交流フェスも、明彦さんらが始めたイベントが原型という。
新しい町で、住民たちは子どもを通じて打ち解けた。子どもたちが巣立った今、「交流が少ななってきたなあ」と明彦さんは寂しく感じることもある。
再び、交流フェスの会場。夫妻は食べ物やステージの段取り、果ては合唱での出演と、やっぱり走り回っていた。
同じ町に暮らす者同士。つなぎ止めるものは一つでも多い方がいい。
「ここに骨をうずめるんやもん。とことん楽しまないと」
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ところで二つの「秋祭り」では、意外なほど多くの親子連れを見かけた。特に目を引いたのは、乳幼児だ。
これまでどこに隠れていたんですか。話を聞くと、興味深い事実が分かった。
次回、最終回。つつじ復活ののろしが上がる。
(黒川裕生)
2015/12/6