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いのちを学ぶ

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結婚式を挙げた東根歩夢さん(左)と中川未悠さん=2021年2月(東根さん提供)
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結婚式を挙げた東根歩夢さん(左)と中川未悠さん=2021年2月(東根さん提供)

 物心がついたころから、立っておしっこをすることに憧れた。自分は「男の子」。一緒に遊ぶ男の子は草むらでしているのに、なぜできないのだろう。

 ところが、小学5年生で生理が始まった。ショックだった。

 自分は何者なのか-。

 そんな悩みを抱えてきた神戸市西区出身の東根歩夢(あゆむ)さん(29)。制服のスカートをはかなければならなくなった中学校では、教室に入るのもしんどくなった。自律神経失調症と診断され、精神安定剤が欠かせなくなる。一時は電車に乗ることもできなくなった。

 高校のとき、勇気を振り絞って友人に相談した。「実は女の子が好き」「心は男の子だ」と。友人は「友達にそういう子がいるよ」と言って紹介してくれた。

 そこで初めて性的少数者がいることを知った。「こう生きていけばいいのか」。自分の居場所が分かった。薬を飲まなくても生活できるようになった。

 昨年11月に尼崎市であった地域イベント。LGBTなど性的少数の当事者や支援者でつくるNPO法人「ミックスレインボー」(同市)のメンバーが、さまざまな性について語る講座があり、東根さんも学生時代の悩みを語った。

 「多様な性があることを、学校で学びたかったか」。会場からの質問に、東根さんは「もっと早く知りたかった。そうすれば苦しまなくて済んだと思う」。

 NPOで理事長を務める井餘田(いよた)みのりさん(53)は、性的少数とされる人の割合は左利きの人やAB型の人の割合とほぼ変わらないことなどを紹介。人はそれぞれに性的指向や性自認、性表現があるという「SOGIE(ソジー)」の考え方を伝え、「性別はグラデーション。一人として同じものはない」と訴えた。

 自身がトランスジェンダーであることを認識した東根さんは、20歳で性転換の手術を受け、21歳で戸籍上も男性になった。神戸市出身で、男性から女性になった中川未悠さん(26)と21年に結婚式を挙げた。今では2人で高校などを訪れ、自分たちの経験を話す。

 「あなたにはあなたの生き方がある」。東根さんはそう伝え続ける。

 性の多様性は、昨年の東京五輪でも注目された。男性から女性になったトランスジェンダーの選手が五輪に初めて出場するなど、性的少数者の出場は180人以上にも上ったとされる。

 ただ、政治は動かない。五輪前、超党派の国会議員が性的少数者への理解増進法案成立を目指したが、自民党の一部が異論を唱え、法案の提出は見送られた。五輪が終わった今、法案が今後どうなるのか、国会からは何も聞こえてこない。

 日本のジェンダーギャップ指数(21年)は156カ国中120位、政治に限れば147位で、先進国で最低レベル。男女の格差だけでも世界から後れを取る中、性的少数者の置かれる立場はまだまだ厳しい。

 「どこから崩していけばいいのか分からない」と井餘田さん。地道に伝え、理解者を増やしていくしかないと自らを鼓舞する。(高田康夫)

2022/1/5
 

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