いのちを学ぶ
子どもたちが性犯罪の被害に巻き込まれる事件が後を絶たない。特に知的障害のある子らは被害を訴えても、証言の信用性などから加害者の刑事責任を問えないケースもある。長年、特別支援学校などで指導にあたってきた教諭らは、性教育の必要性を訴える。(末永陽子)
-大阪府松原市の福祉施設「ぽぽろスクエア」で、約20年前から性教育の授業に携わってきた。元々は音楽教諭。きっかけは。
「支援学校での勤務を機に、障害児の就職支援に尽力してきた。でも、就職後に望まない妊娠や人間関係で悩む子も多かった。学校では、思春期に入り異性の体を勝手に触ったり、正しい避妊具の使い方を知らなかったりする子も。人生を豊かに過ごすためにも性教育は欠かせないと感じた」
-教える内容は?
「性器や性行為を知らないと、性犯罪の被害にあったことさえ分からない子もいる。授業では体の仕組みや性行為だけでなく、自分や相手の大切さ、命の尊さなどを扱う。障害の特性から相手の感情や思惑を読むのが難しい人は、善意や恋愛感情を利用される恐れもある」
-性教育をタブー視する意見も根強い。
「性だけを切り取って生きていくことはできない。『障害者には恋愛も結婚も関係ない』といった偏見もあり、あまり取り組まれてこなかった。そのせいか、障害のある子どもたちは思春期の体や心の変化に戸惑い、自己肯定感が低下してしまうことも。自分を好きになってもらい、『嫌なことは嫌と言っていい』と伝えている」
2022/1/7