イロドリ
ナレーションが日暮れを告げると、天球が夜のとばりに包まれる。舞台では黒光りする投影機が音を立てず動き、暗闇に慣れた目に星明かりが瞬く。
明石市立天文科学館(兵庫県明石市人丸町)のプラネタリウムは昨年、還暦を迎えた。投影機は世界初のプラネタリウムを製作したカール・ツァイス・イエナ社製で旧東ドイツ生まれ。稼働期間は日本一、世界でも五指に入る現役生活を続行中だ。
数百枚のレンズ、200枚近い歯車と構造は複雑ながら仕組みはシンプル。アリ形の投影機の“頭”と“お尻”にある光源から、針で刺したような穴が開けられた恒星原板とレンズを透過した光が天球へ。投影される天体は太陽や人工衛星、1等星から6等星までの恒星など約9千個。肉眼で見えるあらゆる天体を網羅する。「動きが静かでゆっくり。本当の星空のような自然な動きが再現できる」と井上毅館長。
建屋が損傷した阪神・淡路大震災、引退を迫られかけたデジタル化の波。コロナ禍の今年はドイツ人技師が来日できず、約10年ごとの定期点検が先送りに。60年を振り返ると苦難も続いた。
それでも投影機が映し続けるのは、宇宙が誕生してから約140億年の世界。本物に負けない奥深さが、そこにある。(映像写真部・中西幸大)
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〈撮影データ〉ニコンD6 レンズ24-70ミリ シャッタースピード92秒、絞りf2.8 ISO3200
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「イロドリ」は今回で終了します。4月より新たな写真企画が始まります。
2021/3/11







