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きょうからできる認知症対策

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種村留美教授 神戸新聞NEXT
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 認知症について、神戸大教授らに対策を聞くこのシリーズでは、認知症の特性や予防的取り組みを紹介してきました。認知症になると記憶や言語などに障害が出ますが、これはどうしてでしょうか。今回は、神戸大大学院保健学研究科の種村留美教授(59)に、認知症に伴う脳機能の変化などについて聞きました。(聞き手・新開真理)

■脳の損傷部位によって違い

 -認知症になると、脳の機能にどんな障害が出るのでしょう。

 「脳が萎縮する『アルツハイマー型』の場合、記憶をつかさどる海馬(かいば)という部位が弱く傷つきやすいため、記憶障害、物忘れが最初に起こります。新しい経験を覚えることができない前向(ぜんこう)健忘と、過去の経験を失う逆向(ぎゃっこう)健忘があります」

 「海馬は側頭葉の中にあり、近くには会話に関わる部位があるため、言語障害も早い段階から起こります。人や場所などの固有名詞が出てこなくなるほか、自分から話さなくなり、相づちが増えるのも特徴です」

 -家族を他人と思い込む例もあるようですが。

 「それは前頭葉に異常が生じ、人や場所、時間が分からなくなる見当識障害でしょう。かつての実家に帰ろうとする、年月日や昼夜が分からなくなり混乱する場合もあります」

 「前頭葉は問題解決に携わる部位でもあるので、誕生日までにプレゼントを買う-というように、目標を立てて実行し、成果を振り返るといった遂行機能に影響が出る例が見られます。また、洗った食器を再び洗うなど同じ行動を繰り返す、無気力になるといったこともありますが、多くは自覚されていません」

 -その他の部位では?

 「頭頂葉に障害が出ると空間の認識ができず、家の片付けが難しくなります。また物を取り違える行為障害が生じ、櫛(くし)で歯を磨こうとしたり、コーヒーに塩を入れてしまったりすることも。動作の順序がおかしくなり、セーターの上に下着を重ねるような例も見られます」

 「ただ、記憶障害に代表される認知症の中核症状は脳の障害が原因ですが、怒りっぽくなる、ふさぎ込むといった周辺症状は、人との付き合いがないなど生活環境の影響も考えられます。子どもに叱られ続け、幻覚や妄想につながったケースもあります」

 -認知症の種類によって特徴的な症状は違いますか。

 「『レビー小体型』は、しばしば幻覚が出ます。中には恐怖のあまり、自宅から逃げ出す人もいます。一方、脳卒中などに続いて起こる『脳血管性』は、まだら認知症を引き起こします。食卓の左側のおかずに全く手を付けない、顔の右半分にだけ化粧をする-といった『半側(はんそく)無視』の症状が現れることも。このほか、前頭葉と側頭葉に障害が出る『前頭側頭型』では、人格が変わり、窃盗のような反社会的行動につながる場合があります」

 -家族はどうすればいいでしょうか。

 「子どもにとって親の変化は悲しく、『何でできないの』と言いたくなるでしょう。でも認知症は、さまざまなことができなくなる病気。怒られると、理由は覚えていなくても恐怖の感情は残ります。周辺症状は予防できるので、ぜひ前向きな声掛けをしてください。玄関ばかりを掃除し、風呂を洗わないなら『すごくきれいにしてくれて、ありがとう。お風呂場もきれいになると気持ちがいいかもね』というように、まずは相手を受け止める。私たちの調査では、認知症の患者は子どもに感謝の気持ちを持っています。互いに伝わるよう、言動を少し変えてみてはどうでしょうか」

 ▽たねむら・るみ 1958年、長崎県生まれ。2004年、広島大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。作業療法士として、認知症の人の在宅生活支援に関する研究をスウェーデンのカロリンスカ研究所と共同で続けている。07年より現職。神戸市在住。

2018/1/24
 

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