きょうからできる認知症対策

(6)二重課題運動って何をするの?

2018/04/18 13:57

 認知症について、神戸大教授らに対策を聞くシリーズ。前回は運動と認知機能の関係について紹介しました。運動と他の課題を組み合わせる「二重課題運動」が認知機能の低下予防に効果的と分かってきたということでしたが、それはどうしてでしょうか。前回に続き神戸大大学院保健学研究科の小野玲准教授(45)に、二重課題運動の具体例や研究成果などについて聞きました。(聞き手・貝原加奈)

■運動と脳トレ楽しく組み合わせ

 -二重課題運動とはどういったものでしょうか。

 「少しきつい程度の運動と計算やしりとりなどの課題を組み合わせた取り組みのことです。体の健康維持と脳のトレーニングを同時に行うことで、認知機能の低下を防ぐ可能性があるといわれています」

 -どんな効果があるのでしょうか。

 「同時に二つのことをする二重課題運動は、複雑で難しいので、繰り返し行うことで脳の注意機能や、順序立てて物事を実行する遂行機能の改善に効果があることが最近の研究で分かってきました。記憶にまつわる課題を取り入れると記憶機能の改善も期待できます。運動によって認知機能低下の一つの要因になる生活習慣病の予防にもつながるので効率的です」

 -研究の成果を教えてください。

 「私たちは70歳以上の地域の高齢者を対象に、3カ月間何もしないグループと、週に1回二重課題運動を中心に取り組んだグループで、脳の全般的な認知機能を調べました。その結果、二重課題運動に取り組んだグループでは、全員の認知機能がほぼ維持されていたことが分かりました。一方、何もしないグループでは、15人中1人か2人程度、何らかの理由で認知機能が低下していました。日頃から鍛えていれば、認知機能低下リスクが一定程度減らせると言えるでしょう」

 -具体的にはどんなことをやるのですか。

 「友人とおしゃべりをしながらのウオーキングや、しりとりをしながらの踏み台昇降運動などが代表的な例でしょうか。私たちの研究では、踏み台昇降を使いました。数人で上り下りして数を数えながら3の倍数で手をたたいたり、『か』から始まる言葉を順番に挙げたり。間違えても、『間違った』『さっき言ったよ』と笑いになる。組み合わせや認知課題の内容は自由ですが、簡単すぎると脳の活性化につながらないので、『少し難しいな』というレベルの課題に挑戦してみてください」

 -注意点はありますか。

 「転倒を予防するためにも、運動の前にはストレッチや筋力トレーニングを欠かさないこと。下半身の大きな筋肉を意識し、太ももの前側にある大腿(だいたい)四頭筋や裏側のハムストリングス、アキレス腱(けん)などを伸ばすといいでしょう。高血圧気味の人は最初に血圧と心拍数を測ってから、落ち着いた状態で始めてください。継続することが大切です」

 -いつから取り組むといいですか。

 「認知症は発症するまでに20年はかかると言われているので、早く始めるにこしたことはありません。ただ、現役世代は仕事や家庭、人付き合いの中で、自然に二重、三重の認知課題をこなしていますよね。ですから、むしろ食生活の改善や運動など、生活習慣病の予防に焦点を当てるとよいでしょう。教室形式の取り組みはいずれ終わるので、どうやって自分の生活の中に落とし込んでいくかを考えてください。高齢の方は趣味を持ち、地域の会に参加するなどコミュニケーションのために体と頭を使える環境をつくりましょう」

続きを見る

あわせて読みたい

きょうからできる認知症対策

特集