きょうからできる認知症対策

(11)肥満や高血圧との関連は

2018/09/19 12:40

 認知症について神戸大教授らに聞くこのシリーズでは、普段の生活で意識できる予防策や発症の兆候を見逃さない注意点などを紹介してきました。認知症は高血圧や糖尿病などの生活習慣病とも関係があるとされています。今回は内科医で神戸大大学院保健学研究科の安田尚史(ひさふみ)教授(54)に、肥満や高血圧が認知症の発症につながる理由や予防法を聞きました。(聞き手・田中宏樹)

 -肥満や高血圧は認知症発症の原因になりますか。

 「肥満は体脂肪が蓄積した状態。脂肪は皮下脂肪と内臓脂肪があり、内臓脂肪からは血圧を上昇させるホルモンが分泌され、高血圧を招く一因となります。血圧が高くなると動脈硬化が進み、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を引き起こすリスクが高まります。脳の血管に障害が起きると周囲の神経細胞がダメージを受け、血管性認知症の発症につながります。認知症では、アルツハイマー型が最も多いですが、血管性認知症は20%近くを占めます。このタイプの認知症は障害が起こった脳の部位で症状が異なり、言語障害や感覚のまひなどが見られます」

 -日常生活で肥満や高血圧を防ぐにはどうすれば。

 「まずは生活習慣の改善が大切。肥満にならないように食事は適正なカロリーの摂取を心掛けましょう。年齢や体格でも異なりますが、日本人の平均は1日1900キロカロリー前後です。また、塩分の取り過ぎは高血圧につながります。塩分量は1日10グラム以下が理想とされていますが、意識しないと達成は相当難しいと思います。みそ汁や麺類の汁を飲みきったり、薄味の食事にしょうゆを使ったりすると、塩分の摂取量はすぐに増えます」

 -食事以外の予防法はありますか。

 「加齢とともに、体重が変わらなくても内臓脂肪は増加します。筋肉量を維持することで脂肪の増加は抑えられるので、筋肉を鍛えることが大切です。もちろん、散歩やジョギングなどの有酸素運動も効果があります。仕事や家事に忙しく時間が取れないなどの理由で運動が難しいという人は、通勤で1駅先まで歩くなど普段の生活の中に取り入れるといいでしょう。定年などで退職すると活動量が落ちるので、仕事をしている間に趣味を見つけ、適度に体を動かす習慣を身に付けておくことも必要です」

 -肥満や高血圧は遺伝も関係していますか。

 「生活習慣病は複数の因子が関係する疾患とされます。遺伝は発症につながる因子の一つですが、遺伝があるから必ず肥満や高血圧になるわけではなく、環境的な因子が強く関連しています。自分も親も高血圧の場合、遺伝よりも食生活や運動の頻度など親子で生活環境が似ているのが理由と考えた方が良いでしょう」

 -生活習慣の改善はなぜ難しいのですか。

 「例えば、関節リウマチは痛みがあり皮膚病はかゆみがありますが、生活習慣病はこれらの自覚症状がないため本人は深刻な病気と思いません。良いことも悪いことも、習慣はその人にとって昔から行っている普通のこと。だから、周囲が『体に悪いから改善しないといけないよ』と注意しても重大な問題と認識できないのです。まずは若いうちから、肥満や高血圧を放っておくとなぜ悪いのかを知ることが重要。生活習慣病により脳梗塞や心筋梗塞などが引き起こされることや、その先に認知症を発症する恐れがあることを家庭や学校で教える必要があります」

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