きょうからできる認知症対策

(15)予防に効果がある食品は?

2019/02/20 09:30

 認知症への対策を神戸大教授らに聞くこのシリーズ。これまで認知症の特性や生活習慣病との関連、年代別の予防的取り組みなどを紹介してきました。予防に関する研究が進み、日々の食事の中で取り入れるとよい成分が分かってきました。認知症予防に効果があるとされる食品やその働きについて、神経内科医で神戸大大学院保健学研究科の古和久朋教授(48)に聞きました。(聞き手・貝原加奈)

 -認知症予防で食事が注目される理由は。

 「代表的なアルツハイマー型認知症の原因物質の一つに、脳内のタンパク質(ベータアミロイド)がたまってできる『老人斑』が挙げられます。ベータアミロイドの抗体療法で、ある程度老人斑を消すことはできますが認知症を発症してからでは薬は効きません。老人斑を消す可能性がある食品を習慣的に摂取することが認知症を遠ざける現実的な方法と言えるでしょう」

 -どんな食品が効果的なのでしょうか。

 「最も老人斑を除去する可能性が高いと言われているのは、ポリフェノールです。ウコンに含まれるクルクミンや赤ワインをマウスに投与すると老人斑が消えたとする研究もあります。カレーをよく食べるインド人は米国人と比較して、認知症の発症率が約3分の1という研究も。ポリフェノールは植物の色素や苦みの成分で、多くの食品に含まれ強い抗酸化作用があることでも知られています。緑茶に含まれるカテキンもポリフェノールの一種です」

 -脳にどう作用するのでしょうか。

 「脳が活動した時に生まれる老廃物であるベータアミロイドは本来柔らかいものです。何らかの原因でそれが排出されず、大量に1カ所に集まってよどみを作りながら、老人斑としてたまっていきます。ポリフェノールはそれをまた溶けた状態のベータアミロイドに変えるために役立っているのではと考えられます」

 -他にも食卓に取り入れたいものはありますか。

 「サバやイワシなどの青魚には不飽和脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)が多く含まれているので、進んで食べるとよいでしょう。脳の神経細胞には脂肪が必要ですが、DHAなど脂肪酸の摂取で神経細胞の働きが活発になると言われます。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値を減らす働きをするオリーブオイルにも同じ効果が期待できます。地中海食が理想的と言われるゆえんです」

 -野菜はどうですか。

 「抗酸化作用のあるビタミンCやE、ベータカロチンが豊富な緑黄色野菜や果物を積極的に食べるのもポイント。豆やナッツ類と組み合わせてみてください。認知症リスクを高める生活習慣病予防にもつながります」

 -地中海食は日本ではあまりなじみがありません。

 「それなら、魚中心の日本食にしてみてはどうでしょうか。普段使っている油をオリーブオイルに置き換えるだけでも効果があります。食べる量も大切です。腹七分目の食生活を続けることで、長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子が活性化することが分かってきました」

 -これらの食品を取り入れる頻度は。

 「例えばポリフェノール摂取の適切な量は分かりませんが、大事なのは長く続けること、意識しすぎて偏らないことです。週1回カレーライスの日をつくったり、お酒が好きな人は週1、2回赤ワインを選んだり、無理なく取り入れてみてください」

【こわ・ひさとも】1970年、東京都生まれ。95年東京大医学部卒。2004年3月、同大大学院修了。同大学病院で認知症専門外来を立ち上げ、10年に神戸大へ。認知症専門医として診療に携わり、認知症予防の講演も行う。17年から現職。芦屋市在住。

続きを見る

あわせて読みたい

きょうからできる認知症対策

特集